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【映画】『デトロイト』───暴力と恐怖に支配された一晩の実話

 

 

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 「理不尽・不条理・恐怖・暴力・疑心・正義・真実・力・支配………」と色々な単語が頭の中に浮かんで混ざった。    時間をしっかりと割いて、訴えるべきたった1つの事件を始まりから展開、終わりまでを描いており、狭く深い内容。  現場に入り込んだかのような緊張感と臨場感が素晴らしかった。  時代や事件背景も含めた内容はドキュメンタリー風で良かった一方、「思考と善悪の判断」は曖昧な印象。
※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。

2018年1月31日鑑賞

デトロイト
(原題:Detroit

 

 

【評価:4.4/5.0】

 


【一言】

「理不尽・不条理・恐怖・暴力・疑心・正義・真実・力・支配………」と色々な単語が頭の中に浮かんで混ざった。

時間をしっかりと割いて、訴えるべきたった1つの事件を始まりから展開、終わりまでを描いており、狭く深い内容。

現場に入り込んだかのような緊張感と臨場感が素晴らしかった。




 

概要を表示

 



【目次】

 

 


 

 

ストーリー

 1967年にアメリカのデトロイトで発生した、黒人による大規模な暴動事件を、実話に基づき描いた作品。

 パーティーを開いていた深夜の違法酒場に警察が乗り込み、店主らを逮捕。
 黒人らは石を投げて抗議するが、これをキッカケに放火・略奪へと暴動は規模を拡大していった。


予告動画

 

 


 

 

作品データメモ

監督:キャスリン・ビグロー
制作:アンナプルナ・ピクチャーズ
脚本:マーク・ボール
キャスト:ジョン・ボイエガ, ウィル・ポールター and more.
上映時間:143分
日本公開:2018年1月26日
配給:ロングライド
公式サイト

 

 


 

 

 

感想

感想外観

 この事件自体を詳しく知ったのが初めてだったので衝撃的だし、とても驚きました。
 そういう意味でも、「伝える」という大きな役割を果たした映画だったと感じました。




 「暴力」が描かれる中で、色々な事を考え、また感じました。
 警官という権力を持つ者が暴力を振るう理不尽さ。その暴力に耐え、恐怖に怯える感覚。正義の象徴が暴行を行う不条理さ。




 1つの事件の始まりから終わりまでを丁寧に描いており、その小さなピースがデトロイト暴動の全体で起きていた事を想像させました。
 再現ドキュメンタリーのような細かさと、実際の映像を用いた構成が『伝える映画』としての役割を果たしていたと感じました。
体験者が語る実話





 そして、その「事件」の臨場感がとても凄かったです。
 細かく展開を描いているから、その現場に居合わせたような感覚に陥りました。また、迫真の演技から導かれた緊張感が私を支配しました。




 この映画はドキュメンタリーとして良く出来てると思います。ただ、最終的な善悪の判断は事実に基づいているとしても、警官や黒人らが「どう考えていたのか」は曖昧な印象でした。

 それでも、こうした状況で誰も皆んなが悪人ではないという事を心に留めておく必要があると思いました。



 私個人的に、ここまで黒人、または非白人の俳優さん方が出演している映画を初めて観たかもしれないです。


 もちろん無くはないでしょうが、一人ひとりが主人公として現実を生きていて、思考や物語を背負ってる個人としては初めてかもしれないです。
 あと、白人警官役のウィル・ポールターの演技が素晴らしかったです!

 

 

 

 

暴力の理不尽さ

 デトロイトで起きた暴動事件を描いている本作では、警官から黒人に対する暴行も、黒人が行う暴動も描かれていました。




 それらの行為を観て、詳しくは考えなかったけど、色々な短い感想が頭の中に浮かんできました。
 「酷い」なんて一言で片付けられるものではありせん。 



●正義を背負って市民の安全を守るはずの警官が、正義の名の下で暴力を振るうことの理不尽さ。

●力を持つ者が、持たざるものに対して暴行する事の非道徳的な行為。

●一方で、暴動や略奪といった犯罪・暴力でしか訴えることの出来ない黒人に対して感じた残念さ。

●真実を訴えても認められない不条理さや、時代と状況に流されてしまう心理の弱さ

●暴動が続く厳しい中で、警官の中に募っていく疑心暗鬼の気持ちと、一方で人種差別的な言動への怒り。



 本当に文字にならないような感情や感想を沢山抱きましたし、頭から抜けているものもあるでしょう。

 事件後に、部外者がただ映画一本観ただけで語るのは失礼なのかもしれませんが、それでも様々なコトが渦巻く中で、色々な感想が湧いてきました。

 

 

 

 

伝える映画

 本作は現実に存在していた事件を伝える映画として非常に上手だったと思いました。

 具体的には、英雄的な人物や、悲劇的な人物に焦点を当てて取り上げるのではなく、「デトロイト暴動」という大きな事件に巻き込まれた「警官と黒人」を、1つの事件を描く事で示そうとしたように感じたので。
インタビュー「当時と今」





 「デトロイト暴動」という大きな事件を題材にしながらも、実際に本映画で描かれたのはたった1つの事件。
 それも、ある夜、ほんの数時間の出来事を丁寧に、詳しく描いています。




 1つの事件の引き金から、その展開を一挙手一投足描き出しながら、最終的な結末までを描く。
 この細かさだから、事件に関わった人の表情とか、様子を丁寧に描き出さていました。



 大きな事件の全体を描くのではなく、小さな事件とそれに関わる人物を詳細に描く事で、結果として事件の全体像とともに、人々がどんな気持ちで過ごしていたのかを、少し想像できるような気がしました。



 また、実際のニュース映像や記録写真を劇中で用いることで、「いま自分が観ている映画が、現実に起きた事だった」と強く認識させられました。



 

 

 

 

事件の臨場感

 描かれた事件の臨場感が凄かったです。



 始まりから展開まで細かく描かれているから、本当にその場に居合わせて、ずっと事件の経過を現場で追っているかのような錯覚に陥りました。

 他の実話映画や伝記映画と違って、傍観している感覚が薄かったです。



 もう一つ、緊張感がものすごく伝わってきました。
 殴ったり、脅したり、叩いたり、発砲したりと暴力を振るったり、警官が黒人を脅すために怒鳴ったりしている場面は本当に怖かったし、観ている私まで緊張してしまいました。

 

 

 

 

演技、そして思考

 演技がとても良かったです。

 具体的には、ウイル・ポールターが素晴らしかったです。


 私の中で、彼は『ナルニア国物語』での弱虫ひねくれ少年ユースチスの印象がとても強いので、今回、このような役を演じたことで衝撃というか、驚きました。

 もちろん、疑心と怒りと差別が混じった迫真の演技も素晴らしかったです!
インタビュー動画





 それから、黒人・非白人の俳優さん方が多いという印象でした。


 他の映画で奴隷やアフリカが舞台だったりすれば当然登場するのですが、それは「背景としての人間」というか………(失礼な言い方でスイマセン)

 本作で何人も出てきた黒人・非白人の人物たちはそれぞれが「生きている」という感じがしました。
 詳しく事件を描いているせいか、一人ひとりの表情や感情を細かく描いているから、生きている感じがしました。
キャストについて





 「思考」というのは、何を考えたのか想像させられたという意味です。
 他の映画での考える事はありますけど、本作は内容というより演技がアプローチしてきた印象でした。

 なんというか、黒人や白人警官達が実際に何を考えて、どんな心理で行動していたのか分かりませんが、俳優さん方の演技で表された表情から色々な物がイメージできると感じました。



 

 

 

 

 

ネタバレ感想

以下、ネタバレあり

 

 

ネタバレを表示

 

 まず、とにかくモーテルでの事件が凄かったです。暴力に任せて尋問をする警官と、必死に耐える黒人たちの様子は、観ていて本当に辛かったです。



 人を殺しておいて、ナイフを傍らに置いて正当防衛を装ったり、口外しないことを強要したりと、警官のずる賢い行為には腹が立ちました。



 最後、ラリーがモーテルから逃げて警官に助けを求めたとき、その白人警官は「Come on, brother」と声をかけていました。 これを聞いて、『ブラザー』という単語を使った事がとても嬉しかったです。善人もいるんだなぁ〜と。



 結局、市警たちは何であんな事をしたんでしょう?
 本当に正義を信じての行いだったのか、差別主義的な考えがあったのか。それとも単に暴力がしたかっただけなのか………。

 
エンドロールのMV

 

 


 

 

 

以降、映画本編のネタバレあり

 

 

 

 


 

 

 

ネタバレあらすじ

 

序盤

 まずはアメリカ合衆国における黒人や非白人らの歴史からスタート。
 デトロイトでは、過密な居住地区に沢山の黒人が詰め込まれ、さらに暴力的な白人警官が目を光らせていた。



 深夜の酒場で行われていたのは、黒人軍人の退役祝いパーティー。お酒やゲーム、音楽を流したりして楽しんでいる。

 その建物脇にパトカーを停め、店内に突入したのは白人警官ら。裏口から逮捕者を護送するつもりが、表口からになった事で、周囲の目を引いてしまう。


 周辺の住民は、白人警官が理由なく不当に黒人を逮捕しているとして石を投げて抗議をする。



 その小競り合いは、放火・略奪・暴力を伴った大きな渦となり、規模を拡大して「暴動」となる。

 

 

 

 

 

前半

 この暴動はどんどんと大きくなっていき、市警の手には負えなくなると、州知事の指示により、州兵と軍隊が動員される。
 あちこちの屋根や屋上には、スナイパーが潜んでいるとの情報まで。

 150ブロックに渡って立入禁止区域となった地区では、破壊と荒廃により街はボロボロになっていった。




 警察は、
 「アメリカの市民には略奪する権利はない。犯罪には、力で対処する」

 街をパトロールしていた若い警官2人は、この街を守るという使命に燃えているように見えた。しかしクラウスは食料品を略奪しただけの黒人に対して発砲し、殺してしまう。
 状況が状況なだけに、彼の処分は保留のまま、仕事を続けることに。




 舞台は代わり、ここは劇場。
 「ザ・ドラマティックス」というグループを組んだデトロイト出身の黒人たちは、自分たちを売り、レコード会社との契約をする為に初舞台で歌おうとする!
 しかし、その晩にも大きな暴動が起き、劇場は閉鎖され、彼らが歌うことはできなかった。
本編映像




 家に帰ろうとするも暴動で難しく、それぞれバラバラにはぐれてしまう。
 ラリーとフレドの2人は近くの安モーテル「アルジェ・モーテル」に泊まることにした。




 一方、警備会社に務める黒人のメルヴィンは近くにやってきた州兵たちにコーヒーを振る舞い、会話をする。
 こうする事で、自身が撃たれるリスクを下げようとしているのだ。

 

 

 

 

中盤

 アルジェ・モーテルでは、ラリーとフレドの2人が、遊びに来てた白人女性2人と仲良くなり、部屋へ招かれる。
 そこで、同じ黒人たちと合うと、若干の険悪ムードを醸しつつも、談笑する。




 その後、ラリーらが帰ると、部屋にいたクーパーは白人たちを怖がらせてやるという軽い気持ちで、州兵達に向かっておもちゃの銃を撃ち、空砲で驚かせる。




 しかし、空砲とは知らず、スナイパーによる狙撃だと勘違いした州兵らはすぐにアルジェ・モーテルと突き止めると、市警へ連絡。
 駆けつけたクラウスら市警はモーテルを取り囲み、銃を構えて突入する。




 突入した直後、クラウスは階段を駆け下りて逃げるクーパーを発見する。
 何をするかと思ったら、手にした銃でクーパーを撃ち殺した。しかも、正当防衛を主張する為に、ポケットから取り出したナイフを死体の傍らに置く偽装工作まで行った。

 

 

 

 

 

 

後半1

 モーテルに突入した警官らは、宿泊していた黒人たちを次々と1階へ追い立てると、乱暴に壁に向かせ、手を壁につかせる。
 それは白人の女であっても扱いは変わらなかった。




 ここから、地獄のような時間が始まる。
 暴力と恐怖に訴えた尋問は、殴ったり、脅したりと一方的な威圧と力で犯人をあげようとする。
 しかし、モーテルからは証拠の銃が発見されず、また犯人を名乗り出る者もいない。



 一人ずつ別室に呼んで暴行を加えて尋問したり、任意に選んだ1人を撃ち殺すフリをして恐怖を植え付けたり。
 とにかく様々な手段で黒人たちから答えを聞き出そうとする。



 州兵らはこの状況を見て、「市警は狂ってる」といい、人権問題に絡むから撤収を決める。
 また、警備員のメルヴィンもモーテルに駆け付け、死体を目にし、市警らの横暴を目の当たりにする。




 容疑者が出ない中、脅しをするため、クラウスは相棒に1人を撃ち殺すように命じる。 彼は命じられた通りに、黒人を撃ち殺す。それが脅しの為の演技であるとも知らずに。



 状況が進展しない中、クラウスらは黒人たちの解放を決める。証拠が出ないこのままだと、自分たちの立場が危うくなるから。
 決して口外しない事を誓わせ、一人ずつ解放していく。しかし、フレドは命令に逆らおうとし、その場で射殺されてしまう。




 逃げ延びたラリーは、近くを通りかかった白人警官に保護されて、病院で治療をしてもらう。

 

 

 

 

後半2

 事件は調査の段階へと進展した。

 まず、メルヴィンが警察署へ呼ばれる。モーテルの一件に関する事情聴取かと思っていたら、なんと彼を容疑者として呼び寄せたのだ。
 そのまま、彼は留置所へと送られてしまう。


 一方、モーテルで現場にいたクラウスを始め3人の警官にも事情聴取が。
 2人は自らの行為と事件を自白して全てを話した。しかし、クラウスだけは頑なに否認をし、弁護士を呼んで黙秘を続ける。



 そして、事件は法廷へと舞台を移した。
 事件に関わっていた黒人や州兵などを召喚して検察・弁護側の双方が証人尋問を行う。

 しかし、そこで弁護側が質問するのは、「壁に向かってたから後ろは見えないのでは?」という質問と、黒人らの前科を問うものだった。

 審判は陪審員に委ねられ、全員が白人の陪審員はモーテルでの事件における市警らは『無罪』であると評決を下した。




 事件後、ラリーが脱退した「ザ・ドラマティックス」はレコード会社と契約し、大きな成功を納める。
 彼らは今でも活動を続けている。


 一方、ラリーは聖歌隊へ志願する。白人の為に歌を歌いたくないし、警官がいるところには行きたくないから。
 そして彼もまた、今でも聖歌を歌っている。



 モーテルでの事件に関わったクラウスら3人の警官は罪に問われることはなかったものの、もとの仕事に戻る事はなかった。



 モーテルで起きた事件の真相は未だに明かされないままである。
 この映画は、事件の関係者らの記録と記憶に基づいている。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!