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映画・アニメ・美術展などを中心に感想を書いています!

『映画』や『アニメ』、『読書』や『美術館』などの思い出を残すために始めたブログです。完全に個人用なので読みにくかったらスイマセン!

【映画】『ジョーカー』:暴力と混乱の中で”悪の象徴"を前に殺人衝動が煽動される衝撃的な怪演の傑作!

2019年10月02日鑑賞(試写会)

ジョーカー
Joker

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【評価:5.0/5.0】

 
【一言】

混乱と暴力の渦中
ホアキン・フェニックスの怪演が生み出す《悪の象徴》たる道化師はカリスマ的な煽動力で「殺人衝動」に似た高揚感を観客に植え付ける。

社会敵であり、ヒーローとして。
分断と軋轢高まる現代に鳴らされる警鐘であり、資本主義への挑戦。

 
【Twitter140文字感想】

 

 

 


 

 

【目次】

 

 

STORY&STAFF

 

「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸にコメディアンを夢見る、孤独だが心優しいアーサー。
都会の片隅でピエロメイクの大道芸人をしながら母を助け、同じアパートに住むソフィーに密かな好意を抱いている。笑いのある人生は素晴らしいと信じ、ドン底から抜け出そうともがくアーサーはなぜ、狂気あふれる〈悪のカリスマ〉ジョーカーに変貌したのか?
切なくも衝撃の真実が明かされる!
映画公式サイト

予告動画

  

監督:トッド・フィリップス
脚本:トッド・フィリップス
制作:ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ
音楽:ヒドゥル・グドナドッティル
キャスト:ホアキン・フェニックス, ロバート・デ・ニーロ and more.
上映時間:122分
日本公開:2019年10月04日
配給:ワーナー・ブラザース
公式サイト

 

 

 


 

 

 

映画を初心者でも楽しめるJOKER講座

 

 大絶賛の本作。
 大丈夫です、アメコミはおろかバットマン』作品を1作も観ていない人でも十二分に楽しめるので、ぜひ劇場に足を運んで、暗闇の中で鑑賞してみてください!



 以下は、「知っておくと良いよ!」という簡単な基礎知識紹介です。これだけ知っていれば問題ない!

・「ジョーカー」とはバットマンの宿敵
・本作は『バットマン』の前日譚 
・舞台は架空のゴッサム・シティ
バットマンの正体は大富豪ブルース・ウェイン
・B.ウェインは幼少期に両親を殺されたことがキッカケとなり、バットマンになる。


上の6点だけ頭に入れておけば、この作品は問題なく楽しめます!

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実写版ジョーカーは何人もの俳優が演じたてきました。




 もし時間がある方は、以下の過去作2作のうちどちらかを観ておくと、より理解が深まり、楽しめること間違いなしです!

◇『バットマン』(1989年)
 ・監督:ティム・バートン
 ・時間:127分
 ・バットマン誕生とジョーカーとの対決の姿が描かれる作品。少し映像は古いもののT.バートンらしい世界観と現在に繋がるジョーカー像の始まりとして、予習にピッタリ!

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◇『バットマン ビギンズ』(2005年)
 ・監督:クリストファー・ノーラン
 ・時間:141分
 ・バットマン誕生に焦点を絞って描かれた作品。有名なアメコミヒーローがいかに生まれたかを知るにはうってつけ。映像も現代的でスタイリッシュなので見やすいかも。

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 ちなみに。
 「ジョーカー」は正体不明のヴィランです。

 誕生理由で一番有名なのは、「ただの犯罪者がバットマンから逃走する中で化学工場の劇薬に落下し、肌は白く、髪は緑になり、狂った」という説です。

 以下の動画は、映画『スーサイド・スクワッド』の特別映像ですが、「ジョーカーの解説」が比較的分かりやすいです!

キャラクター解説動画⑨ジョーカー

 

 

 

 

 

映画の感想

 

感想外観

 

 「ジョーカー」という存在
 《悪》の象徴であり、カリスマ的なヴィランである彼がゴッサムシティで誕生する”瞬間”。衝撃的であり、まさに劇的であり、興奮と鳥肌が走り抜けました。

 彼は《悪》であり、人々の《ヒーロー》でもある。
 暴動と混乱の中で立ち上がる彼の姿を見た時の鮮烈な高揚感と殺人衝動は忘れられない。

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 狂気の笑い声
 ホアキン・フェニックスの”怪演”には翻弄されるような恐ろしさと、絶対的な魂が宿っていました。

 新しい、ヴィランとしての「ジョーカー」を見事に演じていたし、あの笑い声が耳から離れない、そんな名演でした!

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 人間ドラマにして、社会派映画
 一人の貧しい道化師が、「ジョーカー」になるまでを描いた本作は、アメコミ作品の前日譚でありながら、社会への完璧なアンチテーゼでした。

 「狂っているのは俺か?世間か?」
 彼はこの社会が生み出した怪物にして道化師。軋轢と分断が蔓延る現代世界を前に、彼の言葉が胸に突き刺さります。

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 アメコミの「ジョーカー」としても完璧。

 白い肌、緑の髪、紫系のスーツ、真っ赤な口。
 出生不明のヴィランの誕生物語として、『バットマン』の物語として、素晴らしい解釈でした。ゴッサムシティの根幹をたった120分のこの作品が全て描き出しました。
 見事としか言いようがない、拍手ものの作品でした!



 音楽が異様に耳に残りました。
 不幸で不運なアーサーと、不条理な社会を映す映像に合わせて、不安感を煽りまくる不自然な音楽が本当に凄かったです......。

 

 

 

 

「ジョーカー」の衝撃

  

 「人を殺したい。
 そう煽られるような、どこか心の奥底で殺人衝動を炙り出されるような、人間の心の中へと侵入してくる、危険で脅威的な、素晴らしい作品でした。

ジョーカーのカリスマ性。
 彼の誕生と登場を拍手で迎えたくなったし、声を挙げて祝福し、讃え、破壊と暴動の狂気へと身を捧げたくなる、恐ろしい映画でした......。

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 まさに「カリスマ」と呼ぶに相応しい存在。
 ティム・バートン版ではユーモラスさとサイコパスさを兼ね合わせたジョーカーのイメージが確立され、それを「ヴィラン」の頂点へと押し上げたクリストファー・ノーラン版のジョーカー。それは徹底的に「悪党」としての存在でした。

 本作で描かれたジョーカー。
 それは、「悪」でありながら「ヒーロー」としてのジョーカー民衆を先導(扇動)し、悪党を生み出し、象徴としての地位を確率した「カリスマ」としての姿でした。

 だからこそ、鑑賞者すら煽られるような、どこか讃えたくなるような、そんな恐怖と希望が混ざった不思議な高揚感を感じたのだと思います。

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 ジョーカーが誕生する瞬間。

 大都市・ゴッサム・シティにて、嫌々と立ち上がり、揚々と笑い声をあげ、飄々と踊る姿。乱れた緑の髪を振り、真っ赤に塗られたく唇を持ち上げる姿。ピエロの仮面を脱ぎ、白く塗られた肌の奥で光る眼光。

 史上最も悪名高き犯罪者の”彼”が産み落とされる瞬間に、感じた感情が得も言われる快感と興奮と恐怖が混じった、高揚感と戦慄でした。

映像でも物語でもなく、「キャラクター」に対する《衝撃》こそ、「ジョーカー」の威力であり、本作はその部分を最も見事に描き出していたと思います。

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ホアキン・フェニックスの怪演

 

 コメディアンを目指す市民・アーサー。
 道化の仮面をかぶった犯罪者・ジョーカー。

 相反する2つのキャラクターを見事に演じ出したホアキン・フェニックスの演技を評価し称賛する言葉に「怪演」意外の熟語が見つかりません。

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 過去に幾度も演じられたジョーカー。

 紳士気取りでユーモラスな狂気が光るジャック・ニコルソン。不気味な笑みと怪物的な言動が絶賛されたヒース・レジャー。現代的でイケメンの新しい姿を築いたジャレッド・レト。(シーザー・ロメロ版は未鑑賞)

 私はヒース・レジャー版が好きです。
 けど、今回のホアキン・フェニックス版の完成度があまりにも高すぎて、ジョーカー像が新しいのに完璧で、ヒース・レジャー版を超えた、と真剣に思いました。

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 「笑い」がヤバいです。
 文字通り精神疾患的な意味でのヤバさもあり、何が本当かわからないという正体不明な恐怖もあり、ただただ高笑いが気味悪いです。

 役作りで大幅に減量し、骨と皮だけのガリガリの姿になった彼が鳴らせる腹の底から響く笑い声は「狂気というか「病気」。異常性が滲み出ていると同時に、しかし同情を誘うような感じがして、見ている方は感情がおかしくなりそう。

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 本作は「ジョーカー誕生」の物語。
 コメディアンを目指す不運な一般市民アーサーが、犯罪者ジョーカーへと変貌していく姿を描くわけで、ホアキン・フェニックスはその変容を見事に演じていたと思います。

 アーサーの時は悲壮感が全身から漂い、絶望のどん底を味わっている哀れな姿でなんとか生活する市民の姿が描かれ、悲劇的な、人間ドラマ的な感覚で彼の背中を観ているような感覚でした。

 しかし、一度クラウン・メイクをすれば別人。
 顔まで変わったのではないかと思うほど、ある意味では立派で堂々としていて、どこか喜劇的で楽しそういすら映るキャラクター。

 これは本当に凄いな、と。
 観ていて、のめり込みそうになりました。

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人間ドラマとアンチ資本主義

 

 本作はアメコミ作品。
 もちろんアメコミ要素もあります。しかしそれ以上に印象に残り、頭脳に痛烈に刻まれるのは、「人間ドラマ」であり、「社会派作品」であるということ。

 まぁ、ヴェネチア国際映画祭で評価されたというところからも想像出来ますが、それ以上に真面目な映画で、でも最高のエンタメでした!



 人間ドラマ。
 本作は「一人の市民が悪党になるまで」を描いた物語。彼は”なぜ”悪者になったのか、彼の身に”なに”があったのか。不幸で不条理で不運な彼の人生を描き出す、辛すぎる現実のお話です。

 「ジョーカー」も普通の市民だった。
 この一点が映画の印象を大きく決定付けたのだと思います。
 従来の『バットマン』ではそもそもジョーカーは最初から「悪役」であり、それが当然でした。でも本作では彼は善良な市民だった。彼を変貌させたのは社会システムであり、ジョーカーを生み出したのは街ゴッサムシティであるという非難の提示。

 悪にならざるをえなかった。
 その背後にあるアーサーの人生に起こる悲劇を描き出すストーリーが作品をより深くするし、「元は市民だった」というところが余計に恐怖を抱かせる要因なのではないかな、と思いました。人間ドラマがあるからキャラクターの背景がより鮮明に描き出され、それによって観客の中に「ジョーカー」がリアルに浮かび上がってくるような、そんな気がしました。

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 そして、社会派作品でもあるな、と。

 前述した「ジョーカーは社会が産み落とした」という万人への非難・批判の背後にあるのは、ゴッサムシティに蔓延る貧困・格差・軋轢・分断・不満・対立・権力への不信感・デモ・ストライキ・抗議......といった「混乱」です。

 この状況、まさに今の世界。
 他者への敬意と尊重を忘れ、批判に陶酔し、格差が拡大する「資本主義の限界」が露呈している現代社に対して、「ジョーカーは生まれるぞ」と警鐘を鳴らしているように感じました。

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 「狂ってるのは俺か?それとも世間か?」

 劇中でアーサーが口にしたこの問いに、果たして答えを出すことができるのか。「お前が狂っている」断言できるのか。投げかけられたままの質問が頭の中でこだまします。

 

 

 

 

 

完璧なアメコミ的解釈

 

 本作の原作はアメコミ。

 人間ドラマとか社会派とか色々と書きましたが、根底にあるのはアメコミ。出生不詳で存在自体が謎に包またヴィラン「ジョーカー」の誕生物語にして、『バットマン』の前日譚に当たる本作。

 その「解釈」は「完璧」だったと思います。
 原作コミックスは読んでいない私ですが、感動ものの完璧さで、ヤバかったです!



 たった120分。
 その極めて短い時間の中で、「全てを説明」したと言っても過言ではない、本当に見事な脚本であったと褒めるしかない、そんな映画でした。

 ジョーカーが誕生した所以も、ゴッサムシティが犯罪の街になった理由も、その中心にジョーカーがいる理由も。

 ネタバレなのでこれ以上詳しくは書きませんが、凄いです。

バットマン80周年特別動画】バットマンのヒーローとしての変遷

 

 

 

 

不安煽る音楽と、美貌の映像

 

 様々な演出がなされましたが、特に印象的だったのは「音楽」です。
 なんだか、アメコミ映画とは違う、ホラー映画に近いテイストのBGMが不安感や異常さを煽り立てていました。

 『ジョーズ』のテーマに近い印象です。
 正体不明で視認できない「何か危険なもの」が着実に迫っている感じとでも形容すれば良いのでしょうか。もしくは、他ホラー映画のように極限まで音量を大きくすることで煽られる恐怖感のようなもの。

 ジョーカーは人間ですが、音楽の時点で既に、異常な雰囲気が伝わって来ました。



 それから、映像は格好いい!
 そもそも、「ピエロ」というシンボルだけで「ジョーカー」を描き出すことができる、特殊で普遍的なキャラクター。その特性を見事に活かしていました!

 ピエロ≒ジョーカー。
 だから、主人公を映さなくても、ピエロの仮面や新聞の見出しで描き出せてしまう。それ故に、より不可思議でありながら格好いい映像がたくさん見受けられました。

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 さらに、ジョーカーは絵になる!

 ボサボサの緑の髪を手でいじったり、奇妙なステップで歩くだけで格好いいし、その映像は街の風景を見事に取り入れながら、まるでポスターのようなクールな映像が最高でした!

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以降、映画本編のネタバレあり

 

 

 


 

 

 

映画の感想
※ネタバレあり

 

「悪の道化師」は2度生まれる

 

 「ジョーカー」の誕生の物語。

 私は、本作における「ジョーカー」の誕生は2箇所に分けられると思います。不死鳥のように、一つ前の自分を脱ぎ捨てて新たな姿へと変貌していくように感じました。



 まず最初。
 アーサー・フレックからジョーカーへ。

 社会的に最下層のアーサーに対する理不尽で不運な仕打ち、母親の死、自身の出生の真実など様々な「不幸」が彼を襲う中、訪れた光。
 コメディアンを目指す彼が夢見た、マリーのTV番組への出演。

 ここが1つ目。
 それまでの「アーサー」という人間から、「ジョーカー」という仮装した道化師へと外見も内面もまったく別人のように変容させた彼。驚異的で異常な存在へのぼる一歩手前の前段階。

 母を殺し、道化仲間を殺し、マリーを殺し。
 そしてTVに対して社会への鬱憤をぶちまけるアーサーの姿は、ほぼ「ジョーカー」の人格になっていたと思います。

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 そして、完全な変態を遂げる場面。
 怪物たる真のジョーカーへと変わります。

 暴動の中心で立ち上がるシーンです。
 逮捕された彼が暴徒たちに囲まれ、パトカーの上に立ち、歓声渦巻くその中心で笑い声をあげ、ダンスのステップを踏むシーン。血を手にとって口を塗るシーン。

 この場面こそ、「真のジョーカー誕生」だと直感的に感じました。
 悪の象徴として、抗議の象徴として、抵抗の象徴として、反資本主義の象徴として、ヒーローとして。彼が祀り上げられる姿を描いたあの場面こそ、根源にして起源であると思いました。



 完全なる変容、変態、変貌です。
 人畜無害で貧困と不幸に喘いでいたアーサーが、銃を手にし、人を殺め、混乱の渦中に自ら足を踏み入れ、象徴となることを自ら選択したジョーカー。

 「ピエロになる」ことで全く別の人格を手に入れたかのような、堂々たる振る舞いには感激したし、エネルギーというか”強さ”のようなものが漲っているように感じました。

 前半から中盤にかけての「アーサーの不幸」が長々と描かれただけに、その変貌ぶりには驚いたし、しかし同情の気持ちが加わってか、決して非難しきれない部分があったのも事実でした。

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ジョーカー変貌の衝撃と興

 

 ジョーカーが誕生する様が衝撃的でした。
 もはや、感動の域を超えて、戦慄です。

 「彼がとうとう姿を現した!」という興奮と、「人を殺したくなる」という殺人衝動めいたものが同時に湧き上がってきて、恐ろしかったです。



 まず、元同僚のピエロ2人。
 顔がクラウン・メイクの途中というのがまた...。
 彼に銃を渡した太ったピエロをハサミでめった刺しにして、怯える矮小ピエロは逃してやる。

 あの部屋の中では完全にアーサーが主導権も権力も握っていて、矮小ピエロ・ゲイリーは獲物のようで、生きた心地がしなかっただろうな、と。  アーサーの中に宿る狂気性が表面に現れた、そんな印象を受けました。飛び散る血飛沫が凄かったです。



 そして、ジョーカーへ。

 髪を緑色に染め、顔を白く塗り、赤茶色のスーツを着た彼の姿を目にした時の、得も言われぬ高揚感がヤバかったです。あの「正装」と言わんばかりの格好のシンボルさとは、まさにこういうことなのだと感じました。

 その後の動きも。
 意気揚々とアパートの廊下を歩き、階段で踊り、警官に追われる時も慌てつつどこか優雅さが垣間見える不思議なキャラクターで、それこそジョーカーの魅力なのかもしれないと思いました。

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 終盤のシーン。
 マリーを銃殺し、警官に逮捕されたカリスマ。その彼を乗せたパトカーにトラックが激突し、警官は死亡。ピエロの仮装をした暴徒がアーサーを引きずり出し、「立て!」と叫びながら取り囲みます。

 朦朧とする意識を振り払い、立ち上がったジョーカー。
 誰も皆んなが自分に注目していることに気が付き、手を挙げてお礼のポーズをすると同時に、自身の血液で口が裂けたかのようなメイクを完成させ、踊りだすジョーカー。
 
 このシーンが本当に大好きでした。
映画史に、少なくともアメコミ史には残る名シーンだと思います。



 まさにジョーカーの誕生。

 犯罪者を束ねるカリスマ性、混乱の中心に居座るキャラクター性、ユーモラスにさえ映るダンス、ボサボサの髪を振りまくお洒落さ。

 なんとも筆舌に尽くしがたい感覚ではありますが、心の奥底から湧き上がってくる高揚感、感動、そして「ジョーカーの下に従いたい」という犯罪的な思想の片鱗が浮かび上がってくるような、衝撃的で印象的で、脳裏に焼き付く素晴らしいラストだと思います。

 

 

 

 

バットマン』の宿敵として

 

 本作でのジョーカーの解釈。
 私は見事で素晴らしいと感じました。

 非常によく練られていたし、120分で綺麗にまとまった簡潔さと奥深さを秘めている最高の脚本・ストーリーだったと思います!



 まずは、「ウェイン家」について。

 映画の中盤で明かされる衝撃的な真実。
 市長選に出馬した大富豪トーマス・ウェインがアーサーを養子としていた事実。そしてそれを確認する為に訪れたウェイン邸で出会った少年。

 ブルース・ウェインが少年時代に、ジョーカーの前身となるアーサーと対面していたという事実に驚きました。そして、登場させてくれたことが本当に嬉しかった!  こういう関係性にどこまで踏み込むのか期待していたら、直接的な接触があったというその描き方だけで最高です!

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 さらに、ラストの暴動での悲劇

 演劇鑑賞を親子でしていたウェイン夫妻と息子・ブルース。街の混乱が最高潮になる中、反感を買ったトーマスがピエロの仮面をかぶった何者かに銃殺されます。さらに、母親も殺害され、真珠のネックレスが奪われてしまいます。

 幼いブルースの前で起きた悲劇。
 ネックレスも含めて、ここまでストーリーに織り込んでくれたことに感謝しかないです。このシーンだけで、「ジョーカーがバットマンの宿敵になる」その理由の1つが静かに説明されているようにも思えます。



 あとは、街の様子も。

 街の大富豪トーマス・ウェインが市長選に出馬するという中で、証券マン殺害事件を契機に貧困層で不満が爆発し暴動に発展。そしてゴッサムシティが犯罪に飲み込まれていく、という運命を辿るのでしょう。

 ゴッサムシティが犯罪の街に。
 従来の映画では元々犯罪率の高い絶望的な街として描かれてきましたが、本作では「ジョーカーが原因」であるという解釈。

 それまで悲劇的なアーサー像を描きながらも、最後には徹底的にジョーカーを悪党に仕立て上げ、『バットマン』という作品へと繋げた、素晴らしい構成であったと思います!

 

 

 

 

資本主義への挑戦

 

 本作で感じたのは「アンチ資本主義」
 それも、共産主義社会主義的な思想面での批判や攻撃ではなく、「貧困」や「格差」といった社会問題を描き出すことによる非難でした。

 社会派という言葉が相応しいのか微妙なところですが、分断と軋轢が高まる現代社会において、フィクションの持つ力を借りたかのようにも思える、そんな作品でした。



 ピエロというシンボル

 ゴッサムの街では上流階級の人々と間で格差が広がり、街には貧困と絶望と悲壮感が漂う暗い雰囲気。そんな中で報道された証券マン殺害のニュース、トーマスの「正義の社会における落伍者はピエロ」という発言。それらが大きなムーブメントとなり、混乱の風が吹き荒れ始めます。

 そんな中で、「ピエロ」は「正義のシンボル」として人々の間に広まります。対金持ち・反格差の象徴としてシンボルが広まるというのは、まさに現代社会と同じ。  人々の心を統一し、同じ方向に向ける上で効果的な方法です。

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 そして、アーサーの訴え。

 マリーの番組で声高く訴える。
 人を殺した。僕は悪くない。社会システムが問題で、金持ちが悪党である。市民の間には貧困と格差が蔓延し、市行政サービスが停止されより困窮していく。起こるべくして発生した事件。

 ゴメンナサイ、彼の迫力に押されて詳細は忘れましたが、このような内容を激しく語っていたと思います。
 聞いていて思ったことはただ1つ。



 「これは、資本主義への挑戦である」

 誰もが信じた資本主義社会で問題が噴出し格差が生じている現代社会に投げかけられた警鐘で、脅しで、予想図なのであると感じました。

 ゴッサム・シティ」という架空の街について、原作者だか編集者だかが「どこにも存在していない場所でありながら、誰もが自分の街であると思える」的なことを言っていたという話をWikipediaで読みました。
 だからこそ、ゴッサムの荒廃はまるで現代社会の成れの果てを見せられているようで恐ろしかったし、このアメコミ映画が資本主義に挑戦出来た理由であって、社会派の物語を紡ぎだすことが出来た理由だと思います。

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狂気と幻覚と笑顔

 

 残りは、映画を見て感じたことをバラバラに書いていきます。
 なので、この節のタイトルも曖昧な感じです(笑)



 妄想、幻覚。
 どこまでが本当なのでしょう?

 アーサーが好意を寄せる黒人女性のソフィー・デュモンド。
 不運で不幸な彼の人生の中で、優しく微笑み笑ってくれる唯一の天使のような優しい存在だと思っていたら───彼女の行為(好意)は全てアーサーの妄想であったという衝撃的な真相に驚きました。

 まさか、そこまでとは。どこまでもアーサーを追い詰める物語だし、その不幸を観客までもが追体験しているかのような衝撃に見舞われて、凄かったです。

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 ジョーカーの笑顔

 本作の「笑顔」は、感情表現としての笑いではなく、精神疾患的な病的症状と発作による笑いでした。これを演じたホアキン・フェニックスは本当に凄い!

 けど、この設定だけは残念でした。
 意味のわからぬ、常人には理解の届かぬ気味悪い笑いを浮かべるからこそジョーカーは恐怖の存在であるのであって、「ただの病気です」となればその意味は大きく変わってしまいます。
 別に、普通に「楽しくて笑う」とか「感情が壊れた」とかの設定でもストーリー的には大きな影響はないと思うのに、なんでこの設定を選んだんでしょうかね......?



 映画構成と狂気。
 この映画は「R15+」指定でした。なので、そんな残酷で残忍で最悪な展開や映像が待ち構えているのかとドキドキしていたのですが......。

 アーサーの人生パートが長い!
 1時間半ほどはアーサーにまつわる物語が描かれました。もちろん見事な物語で引き込まれたし、不幸が重なる姿には同情したくなるし、全く問題ありませんでしたよ。
 でも、正直なところ、「グロシーンはまだ?」とソワソワしていた部分はあります。前半~中盤までは「狂気さ」という意味では薄かったというのが率直な感想。

 けど、だからこそ、元同僚をハサミで殺した瞬間の興奮がヤバかったし、それ以降、アーサーが徐々にジョーカーへと変貌していく様子に感動の念すら覚えたのだと思います。
 でも、いざこの展開になってきて初めて、前半から描かれたアーサーの物語が段々と影響し効き始め、観終わる頃には「素晴らしかった」の評価に。

 そもそも、不幸が続くアーサーの人生はそれ自体が最初から狂っていたし、アーサーも周囲の人物も正気ではなかったですしね。
 なんだか、意味がわかるとゾクッと怖いホラー的な感じです(笑)

 

 


 

 

 

 今回の感想は以上です!

 本当に凄かった!
 エンドロールが終わり、上映終了後には自然と拍手がしたいと心から思ったし、劇場を出たら歩き方がジョーカーっぽくなっていたし(恥ずかしい///)笑。



 本作は試写会で観ました。
 日米同時公開の10月4日前に観れるという嬉しさに加えて、今回は「ドルビーシネマ」を先行体験できました!


 詳しい感想は、以下の記事で書いています!

 

 

 

【10月05日追記】
 10月4日はヤバかったですね!
 『ジョーカー』とジョン・ウィック3』の同時公開日という、恐ろしく豪華な犯罪映画が2本も上映! 幸いなことに、私は前者を試写会で、後者を公開初日に観ることが出来ました!

 

 

 

 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!