【映画】『グリーンブック』:笑いに湧く陽気なバディ・ロードムービー!!
サイトを移転しました。
約3秒後に自動的にリダイレクトします。
※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。
2019年3月1日鑑賞
グリーンブック
Green Book
【評価:4.5/5.0】
【一言】
「面白かった」って感想が1番!
黒人とイタリア系白人が主役出、舞台は差別意識の残るアメリカ南部。
重く暗い物語が描かれるのかと思いきや、明るくて笑顔が漏れるような映画!
個性的で正反対な2人が交わす会話と、それによる「変化」が“とっても”良かった!
【Twitter140文字感想】
【 #グリーンブック 】
— ArA-1 (@1_ARA_1) 2019年3月2日
ピアニストと運転手。
黒人と白人が差別残る米南部に旅へ。
陽気な《バディ・ロードムービー》!
悲観的でも陰気臭くもない。
笑いが湧くほど明るくてとても良い!
“明るく”ても“軽く”はない。
むしろ、暗い「陰」がより印象的に。
対比的な正反対の2人。
とっても、好き! pic.twitter.com/rzTyS5IWJO
感想
感想外観
先日のアカデミー賞にて、作品賞他を受賞した話題作ですね!
───ただ、米国賞の内容とか分からないし、それに寄せるつもりもないので、いつも通り感想を書いていきます!
とっても明るく面白い! 陽気なバディ・ロードムービーでした!
私達、観ている観客からも笑い声が聞こえるような、とても“面白く”て、“楽し”い映画になっていました!
予告では「社会派作品か?」と思ってましたが、そんなの関係なし! ぜひ、2人の旅路を楽しんでほしい!
『グリーンブック』本編映像フライドチキン
(失礼ですが、)ちょっと安心しました。
舞台は黒人差別の残る南部、主人公は黒人と白人の2人という物語要素から、暗く重い内容も覚悟していました。
本当に失礼な言い方ですが、想像や心配と反対に、明るい映画で良かったです。 ただし、「明るく」ても、「軽くない」点はとても大切。
でも、陽気で明るいからこそ、米国の「暗い部分」がより印象的に映るのかもしれません。
さらりと描かれる黒人差別の現状に於いて、それを語る主人公たちもまた【黒人】と【伊系白人】。 「黒人立入禁止」の札や蔑称、人種それ自体の攻撃……など、様々な仕組みが存在し、描かれます。
そして、それ自体よりも、それに対する主人公たちの反応・行動・言動が心に響くし、問い掛けているように感じます。
登場する誰もが好きだなぁって!!
主人公は、イタリア系白人のトニーと、黒人ピアニストのドク。
ドクの考え方は好きだし、トニーの陽気さも好きだし。何人か登場する準主役の人たちも、皆んな好き!
映画の描き方もあるでしょうが、好印象で個性的なキャラクターだったのが良かったなぁ〜と。彼らを演じる俳優さん方の演技も見事で、役というか、人物そのままでした!
印象的なシーンが幾つもありました。
声高に訴えるわけでもないし、主人公らの口を通して直接訴えるわけでもないけれど、しっかり心に刻まれます。
むしろ、【成功した黒人ピアニスト】という立ち位置からの視点“だからこそ”、感じるものが違うように思えました。
主人公はピアニスト。映画の中でも音楽は流れて、これまたノリノリ陽気な感じだったり、テクニック優れた演奏で良かったです!
あと、日本語字幕が良かった!
戸田奈津子さんだからか、本当に素人目でも分かるくらい良かったです!
陽気なバディ・ロードムービー
【陽気なバディ・ロードムービー】
多分、これ以上の表現は無いんじゃないかってくらい、そのままの映画でした!
つまり、観ていてとっても楽しい! 観ていて「楽しい」というのは大事!
本作はスクリーンを見て、他のことを一切考えずに「楽しい!面白い!」と思える作品でした!
鑑賞前の私がそうでしたが、実話を元にした作品ということもあり、「黒人差別を描く社会派ドラマか?」とかなり及び腰というか、気合を入れていた部分がありました。
実話系は嫌いじゃないし、戦争映画とか反差別映画とかも重要な作品であれば躊躇わずにみるタイプですが、やっぱり鑑賞前は気後れしてしまいます。
しかし、本作は全然そんなことない!
観たからこそ言えるのですが、「気楽な気持ちで観てほしい!」とオススメします!! 友達と映画館で見るのに相応しいと言っても過言ではないくらい、本当に「面白く」て「楽しい」という映画作品でした!
その証拠(?)に、ほぼ満席のシアター内が、時折、笑い声で溢れました!
主役のイタリア人・トニーの影響が多いようにも感じますが、観客の心を掴むような陽気さと、笑いを誘う”天然”な脚本が素晴らしかったです!
陰気臭くないし、悲しみにくれて涙を流すような映画でもないです。
むしろ、笑い転げた涙と、「いい話だなぁ」という涙が占める感じなので、臆せずに観ていただきたいです!
「明る」くても「軽」くはない
上述の通り、本作は本当に「陽気」な空気に満ちていて、しばしば笑い声も起きるほどの明るい映画です!
しかし、その「明るさ」を「軽さ」と履き違えるのは間違いであるとも感じました。まぁ、観ていれば自然に伝わってくると思いますが。
監督がどういう意図で映画を制作し、配給会社がどういう意図でプロモーションしているのか、私にはわかりません。(でも題名が少なからず語っていますが)
なので、あくまで私個人的な意見ですが、ここまでの内容でも分かるように「バディ・ロードムービー」で売って欲しいです。理由は単純で、私がそう感じたから。だって、観ていて楽しいし、こんないい映画を(私みたいな)思い違いで見逃すなんて勿体無い! この【明るい楽しさ】を是非伝えたい!
でも、同時に「決して軽くはない」という点も大切だと思います。
本作の「明るい」と「楽しい」に、差別という負の歴史が埋もれているわけではないし、軽んじているわけではないという点は強調する必要があるし、明記する必要もあると思います。
しかし、その上で、なお「明るく面白い」映画に仕上げているところがまた凄いのですが!!
明るいからこそ、「陰」が際立つ
物語が明るく楽しいからこそ、社会の陰の部分が際立つ。
典型的な対比の構造ではありますが、本作でもそれが如実に感じられました。
米国南部の差別は様々なあります。
例えば、映画の予告映像で描かれる、黒人入店お断りのレストランなど。
おじさん2人が楽しく(?)車を走らせる中で、食事の時間になればこういう問題に行き当たります。白人と黒人が仲良くずっと道路を明るく走ってきたからこそ、「あぁ、いまは差別がある状況か」と現実に引き戻されるような思いです。
さらに言えば、昼と夜の対比も印象的でした。
昼間は道路を2人っきりで走っているから、白人や黒人といった垣根を払ったように楽しい(?)明るい移動風景が描写されます。
しかし、一度日が落ちて夜になれば、夕食や宿泊など様々な面で黒人差別という現状が立ち現れるので、胸にくるものがあります。
そんな差別が普通の中では、その差別行為よりも、主人公たちの言動の方がずっと強く印象に残りました。
ネタバレにならないように1つ挙げるなら、黒人のドクが「暴力は敗北」と言い、耐えて反撃するという趣旨の台詞を発するシーンがあります。
キング牧師やガンジーと全く同じ。こういう、彼らの発言や、とった行動が印象に残る素晴らしいものでありました。
登場する人たち皆んなが大好き!
映画の主人公は以下の2人。
◆イタリア系米国人のトニー・バレロンガ
◆黒人ピアニストのドクター・シャーリー(ドク)
でも、その他のキャラクターも皆んな素晴らしい人たちで、大好きになりました!
トニーは何度も書いたように奔放で明るく少し暴力的な陽気なキャラクターの持ち主で、まるで子供のような素直さがあります。
一方、ドクは無表情を貫くような堅い性格でありながら、時々感情をそのまま出していまうような人物。
2人のやり取りが、まるで子供とそれを教育する親のように見えてきて、とても微笑ましかった(?)です。
その他の登場人物も、トニーとドクの周囲の人たちは皆んないい人で、明るく優しくて、大好き!
対照的に、黒人を差別するような人たちもいますが、そんなマイナスの印象を塗り替えて吹き飛ばすくらい、「いい人」が沢山で観ていて嬉しかったし、大好きでした!
役者さんも凄すぎ!
トニーを演じたヴィゴ・モーテンセンは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで「アラゴルン」を演じた方なのですね! 面影まったくなくて、役作りとか凄かったのでは?(だって最近の作品でもあの大柄な体格は観ないです)
それから、ドクを演じたマハーシャラ・アリは、本作と『ムーンライト』で助演男優賞を受賞している実力派!
もう、「映画の登場人物」というよりも、その人物そのままに思えて、演技ではなく本当に映像を観ているような感覚に陥るほど、素晴らしかったです!
インタビュー映像(ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ)
あと、トニーって本当に人脈が広い有名人なのですね!
映画『ゴッドファーザー』にも出演したそう!!!
印象的なシーンは無言で語る
映画の中に、幾場面か印象的なシーンが登場しました。
その「印象的」も尺度が様々でしょうが、とても良かったです。
そういうシーンって、結構無言だったり、少ない言葉を交わしたりするだけで、無駄なものを排除している感があって、より印象に残りました。
一番深く心に残ったのは、あのシーン。
炎天下での走行中、バッテリーが上がってしまい、一時停止したあのシーン。
「無言の力」というものをアレほどに感じたのは、なかなか無いです。
そもそも、トニーが煩いお喋りさんだから、彼が黙っている無言のシーンというのは、自然と神妙な雰囲気が出てくるので、印象に残るのかもしれません。
見事な脚本、そして音楽と字幕
とても良い脚本だったと思います。
素人の私がみても「いい話だなぁ」と思える物語!
特に、主人公2人の「変化」の様子がとても丁寧に描かれていて、しかし自然に変わっていく2人の距離や態度の描写が本当に見事で、とても良かったです!(ネタバレになるので、ぜひ観て欲しいとしか言えない!)
本作は音楽的にも色々な音楽が 流れていました。
あいにく、私自身は音楽にめっぽう弱いので詳しいことは分からないのですが、ポップ調のピアノからジャズ、カーラジオから流れる様々な音楽がいい感じ♪でした!
それから、「字幕」。
これも見れば分かると思うのですが、素人の私が観ても「え、なんか凄い」と感じるほどで、巧みな翻訳というか、複雑な台詞を上手く文字に表示していました!
さすが、伝説的な戸田奈津子さんですね!!
以降、映画本編のネタバレあり
映画の感想
※ネタバレあり
手紙とチキンと車と銃
映画の中では色々なエピソードが描かれていましたが、やっぱりこの「手紙とチキンと車と銃」の4つに関しては最高でした!!
もう、このシーンでは爆笑まではいかなくても、シアターにいる人誰もが笑っていた場面で、本当に大好きです!
「手紙」はドクの添削でトニー自身の文面とは正反対の詩のような文言が書かれてなんだか面白かったし、スペルミスを注意するのも笑いました!
その手紙を読んで感動するトニーの家族や親族の姿も実情と知っている身としては馬鹿らしかったし、「ドロレスは気がついていた」というオチにも爆笑です!!
チキンのシーンも本当に面白かった!
「フライドチキンを食べたこと無い」というドクに対して、チキンを差し出すトニー。怪訝な顔で受け取るも、次のカットでは美味しそうに食べているし、胸肉まで受け取るし!
さらに笑ったのは「骨はどうするんだ?」と聞いた後にトニーが窓の外から放り投げ、それに驚いていたら、ドクも捨てた!! しっかりオチを用意しているのが最高で、ドリンクを捨て、さらに拾いに戻るという───(笑)
銃のやり取りは伏線的な?(笑) 最初は居酒屋で相手を牽制するための嘘かと思っていたら、最後の最後で本当に持っていると判明!
ドクが「持っているじゃないか!!」と叫びましたが、まさにその心境に大共感!
「車」が描く2人の姿と変化&成長
車でのやり取りも面白かったです!
都合が悪くなったらすぐ「前を向いて運転しろ」と注意するドク、「黙れ」と言われた数秒後に喋り始めるトニー。前後の席でのやり取りが面白い!!
本当に、この2人のコンビは大好き!
そして、車に乗る2人の変化がとても繊細で素晴らしかったです!
最初は自分の地位に驕り、仏頂面でお高く止まったようなドクター・ドナルド・シャーリー。
カッとしやすくて暴力に訴えやすい、黒人を嫌うトニー・“リップ”・バレロンガ。
彼らは最初、契約だけの中で凸凹コンビとも呼べるような不釣り合いの2人だったのに、次第にその距離が縮まっていき(KFCでグッと近く?)、ドクの顔には笑顔が増えて、トニーは我慢をするようになって。
同じ時間を過ごすにつれて、トニーは賃金以上の理由を見出し、ドクも自身の過去や立場を語るようになり。最後には、トニー宅でのクリスマスパーティーに自ら赴くという変わりよう。
この変化が、とても丁寧に、しかし自然に描かれていて、その点が素晴らしいと思いました。
ずっと同じ場所に留まるのではなくて、車でいくつもの舞台を移動している中で描かれるから、その2人の変化がそれに重なるように映ったのかもしれません。
トニーとドク、主人公はどちら?
トニー、本当にいいキャラでした!
でもまぁ、映画の描き方の問題もあるでしょうし、「どちらをより”ヒーロ”として描くか?」という問題も大きな部分だったと思います。
トニーは本当に陽気なキャラで、雑で暴力的でもあるけれど、(意外と)他人思いで、誰もが好きになれるようなキャラでした。(ちょっと『シュガー・ラッシュ』のラルフに似ている?) 誰もが好かれるようなキャラクターだからこそ、観ていて楽しかったという部分もあるのかな?と。
さらに、ドクに対して「あんたのピアノはあんただけ」という言葉や、「俺が金のために仕事をしていると?」など人間として尊敬できるような台詞をスラッと発しているところがまた凄いです!
雑だけど、だからこそ真っ直ぐな台詞や、ドクを守ろうとする行動がとても胸にしみました!
一方のドク。
彼だって、自ら勇気を振り絞って南部に演奏しに行ったわけで、様々な侮辱や差別、偏見等にあっても、それをグッとこらえて演奏の旅を続けていた彼。
映画ではトニーの色が強すぎた印象もありましたが、もっと評価されても、というか丁寧に深く掘り下げて描いても良かったのかな~とも感じました。
印象深いシーン2つ
映画を観終わっても印象に深く残っているシーンは2つです。
まず1つ目は、炎天下で車のエンストしてしまった時のこと。
車内から外を眺めたドクの目に映ったのは、ボロボロの着物で畑仕事をする黒人たちの姿でした。
正直、その時はドクが何を考えたのか、労働者たちが何を思っていたのかは分かりませんでした。想像も出来なかったし、ただ静かに見つめ合う両者の間にある「溝」のようなものをただただ感じていただけでした。
でも、だからこそあのシーンが強く深く印象に残ったのかなぁ~と。
そして2つ目は、豪雨の中でドクとトニーが喧嘩した場面。
ここで初めて、2人の本音が聞けたような気がしました。
「黒人よりも黒い」と語るトニーに対して、「ずっと孤独だった。白人でも黒人でもない私は何者だ?」と口にするドク。
常に無表情で寂しげな様子の彼の心の中では、こういうことを考えていたのですね。
この台詞を聴くと、1つ目の農園で働く黒人たちを観ていたシーンが少し分かるような気がしました。「彼らには仲間がいる」ということを感じていたのではないでしょうか。
物語の展開、そしてラスト
物語の展開は、まさに「ロードムービー」の典型でしょうか?
馬の合わない2人がひょんな事から一緒に度に出ることになり、紆余曲折を経て仲良くなるというような。
でもその枠に収まらない部分が、「実話」ならではの面白さなのかもしれないと思いました!
特に終盤は、なぜか「死亡フラグ」みたいなものを立てまくるから、最後にはどちらかが死んでしまうのかと心配したら、全然そんなことない温かなラスト!
クラブで現金見せるから襲われるのかと心配したし、雪の中でパトカーに止められた時はドキッとしたし、トニーが眠たいと言い出したときは事故を起こさないか心配で.....。
でも、無事に帰れてよかった!
ラストの方の展開も本当に良かったです!
心温まるというか、優しい内容で本当に嬉しかったです!
まず、演奏する予定のところ。
レストランで入店拒否されたドクは食い下がることなく、認めるよう要望。支配人はトニーを買収して懐柔しようとするも、トニーもまた拒否。ドクが「君がいうなら演奏しよう」と口にしたときは、2人の間に気づかれた信頼の大きさに涙が出そうになりました。
演奏するのかと思いきや、その場を立ち去る4人。私自身も、そっちの方が良かったと心からそう思います!
それから、吹雪の中でパトカーに止められたときも、ヒヤヒヤしましたが、「パンクしているのでは?」と本当に優しい警官さんで、最高のクリスマスになる予感が!
しかも、睡魔に襲われるトニーの代わりにドクが運転して。最初の頃なら絶対にありえない光景だったと思います!
そして、最後のクリスマスパーティー。
親戚にドクのことを「ニグロ」と言われたときにトニーはそれを否定。本当にこの旅で大きく変わったのだと感じました。 さらに、シャンパンを持って、戸口に立つドクの姿が目に入ってきた時は、嬉しくて叫びそうになりました!
ということで、『グリーンブック』の感想でした!
ここ最近のアカデミー賞作品賞の中でも、ダントツに「見やすい作品」だと思います。陽気で笑える、そんな最高のロードムービーでしたので、ぜひ映画館で大勢の観客と一緒に鑑賞することをオススメします!
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!