【映画】『囚われた国家』:レジスタンスを緻密に描く侵略SFはリアルながらも微々で地味。
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こんにちは。
お元気ですか?
新型コロナウイルスの影響が大変ですね。
#SaveTheCinema 「ミニシアターを救え!」プロジェクトに賛同させて頂きました。詳細は本ブログの(最後)にてご紹介。
『囚われの国家』を観ました!
作品の内容や宣伝から「絶対に面白い!」と思って楽しみにていたのですが、いざ蓋を開けてみると、期待通りとはいかない結果に。
2020年4月6日鑑賞
囚われた国家
Captive State
【評価:3.3/5.0】
【一言】
う~ん......。
SFエイリアン侵略ものにも、
政治色を出す社会派ものにも、
どちらにも曖昧という印象。
レジスタンスの描写がリアル。
でも、ミクロな視点が多すぎて勿体ない。
世界観が楽しめるマクロな視点が欲しかった。
【Twitter140文字感想】
【 #囚われた国家 】
— ArA-1 (@1_ARA_1) April 7, 2020
エイリアンの地球占領。
社会インフラから価値観までも掌握。
現代における“仮想敵”としての異星人!
侵略過程と支配体制が現実的で秀逸。
監視と抑圧へのレジスタンスとテロ。
「今後もし社会に抵抗するなら」をリアリティ持たせて描いてる。
けど、隠密ゆえにSF映えせず…。 pic.twitter.com/zJEkqPfXo1
【目次】
STORY&STAFF
地球外生命体による侵略から9年後の2027年、シカゴ。制圧されたアメリカ政府は「統治者」の傀儡と化していた。貧富の差はかつてないほど拡大し、街は荒廃。そして市民は、この圧政に対して従属する者と反抗する者に分かれた。自由を取り戻すために秘かに結成されたレジスタンス・グループは、市内スタジアムで開催される統治者による団結集会への爆弾テロを計画するが―。
映画公式サイト
予告動画
監督:ルパート・ワイアット
脚本:ルパート・ワイアット
制作:パーティシパント・メディア
音楽:ロブ・シモンセン
キャスト:ジョン・グッドマン, アシュトン・サンダース and more.
上映時間:109分
日本公開:2020年4月3日
配給: キノフィルムズ
公式サイト
映画の感想概要
「期待に反して」というのが正直な感想。
SF映画にしても、社会派映画にしても、サスペンス映画にしても、どうにもピンとこない作品でした......。
そもそも「エイリアン必要なくね?」と思ってしまった自分がいたから、勿体なかったし、残念だったし......。
世界観の設定とか、細かい部分はとても良かったし、個人的には”そういう部分”をより詳しく観たかったです。
エイリアンに侵略された地球。
反抗を企てるレジスタンスによるテロ攻撃が物語のメイン。
エイリアンの高度な監視を避けながら、テロを計画・準備・実行する流れが非常に丁寧で緻密に描かれます。レジスタンスの動きについてはリアリティあるもので考えさせられました。
でも、逆にあまりに細かすぎて”映画映え”はしなかったかなぁ~と。
なんだか、「密着!南米の麻薬組織ドキュメンタリー」を観ている感じ(笑)
世界観の設定は評価ができます。
エイリアンの侵略と支配の展開。
個人の監視や支配層と被支配層の確執、富裕層と貧困層の対立。
現代世界での戦争の姿や、統治に関わる現実を投影している意図が随所から伝わってきました。
でも、これが「社会派」と呼べるまでには程遠いと感じました。映画全体からすると曖昧だし、「部分」だけを見せて、全体像を映しきれていないから。
「求めていたものと違った」というところ。
エイリアンの侵略と支配や、それに翻弄される人類が観たかった。『インデペンデンス・デイ』とか『第9地区』とか。けど、それとは違うものでした。
そもそも、エイリアンの必要性がない。
基本的には隠密に行動するレジスタンスが主役だし、直接的にエイリアンと交戦しないし、エイリアンは姿がほとんど見えないし。
本当の「敵」は一体誰なのか。
エイリアンなのか、体制側の人間なのか、社会構造なのか。そこをもっとハッキリ描いて欲しかったです。
あと、マーケティング詐欺も甚だしい!
私は、このキービジュアルに映っている「謎の宇宙船」と「謎のロボット」が楽しみで映画館に観に行ったようなものです。
でも、映画120分の中で、宇宙船はほとんど登場しないし、ロボットに関しては皆無ですよ!!!!!!
映画の感想内容
リアルなレジスタンス活動
レジスタンスの人々が主役の本作。
そのレジスタンスの活動や行動を描いた部分では、確かにリアリティのある描かれ方がされていました。
「統治者」と称されるエイリアン。
地下深くに基地を建設した彼らを殺し追放するために、テロ攻撃を繰り返して抵抗するレジスタンスの姿。
これだけ聞くと、「反体制的」な英雄の活躍とか、抑圧された人々の蜂起とかを予想するのですが、実際には別物。
地味すぎるくらいに、静かに慎重に行動する姿が描かれます。
この映画は、そこがメイン。
エイリアンが構築した監視網をかいくぐるため、限られた人数で、アナログな方法で情報を伝達し、テロ計画を進行させます。
通信には新聞広告や伝書鳩を使い、伝令を用いて物資を運び、レジスタンスの全体像をメンバーが知らないように分離しておく。
実際に地球が高度な文明を持ったエイリアンに支配された時、本当にレジスタンス活動を展開する姿としてはリアルだと思います。
バレないように。信じられるのは「生身の人間」と「確実な仲間」だけ。こういう状況は、決してフィクションだけに留まらない現実感がありました。
ジョン・グッドマン(本編シーン)
けど、映画としてはどうなの?とも。
めちゃくちゃ地味です。
なんか、「密着!南米の麻薬組織ドキュメンタリー」を観ているような感じ。
隠密行動がずっと描かれて、ドンパチ合戦も殺し合いもほぼ無し。リアルなんだけど、映画として、映画館で観る意味は薄かったなぁと。
私が求めていたのはもっと別のもの。
『インデペンデンス・デイ』や『世界侵略: ロサンゼルス決戦』、『バトルシップ』のように人類がエイリアンに対して果敢に立ち向かう姿。もしくは『第9地区』のような微妙な関係性を探る映画。
社会投影をする世界観は完璧
世界観の設定は完璧に近いと思います。
ここもやはり、リアリティが追求されていました。
「エイリアンが地球を侵略したら」という「IF(もし)」を綿密に仮定してシミュレーションした結果の社会を描き出していたと思います。
※以下で書く内容は、映画本編も含みますが、ネタバレにはならないので、ご安心ください(理由は次の節を読めば分かります)
中でも、侵略過程と支配体制が秀逸。
地球に侵略したエイリアンは、人類のライフラインを掌握することで降伏を引き出します。各国の軍隊を解体。そして、各個人に発信機を埋め込んで追跡可能にし、さらに会話の音声を収集。人工衛星や警察組織などを利用して、人々を監視し、支配を確立していきます。
これはとてもスマートな流れ。
無差別に攻撃して被害を拡大させるのではなく、非常に計画的で無駄のない侵略と支配だと思います。
緊迫の冒頭映像(本編シーン)
この侵略と支配。
現代の戦争でも全く同じだと思います。
まず、ハッキングなどで敵国の通信設備や発電所・変電所などを攻撃して使用不能にし、相手の社会インフラに壊滅的な打撃を与えるのは定石の手段。
だから、情報戦争とかサイバー攻撃に対する国防力を各国が強化している訳ですからね。
本作で描かれているのは「エイリアン」という仮想敵ですが、必ずしも敵は地球外だけとは限らないわけで......。
支配体制下での社会設定もリアル。
各国首脳や政府上層部、さらには富裕層はエイリアンとの協力関係を維持することで権力や価値を強固にしていきます。一方で、搾取される側の人々は貧困層として増大していきます。
政府は不都合な真実は隠し、キャッチーな標語やイベントで人々の心を掴み、不満が溜まらないよう上手く誘導をしているようです。
しかしその反動として、レジスタンスという反体制勢力を生み出す結果となってしまっていることも事実という状況。
この社会設定も、やっぱり現実的。
搾取する側とされる側。
支配層と被支配層。
体制側と反体制側。
完全な共産国家でも作らない限りこの格差が埋まることはなく、誰が統治者になっても尽きぬ問題でしょう。
描く部分があまりにローカル
上述のように、世界観は素晴らしいSFです。
作品全体を俯瞰すれば「エイリアン侵略」や「監視ディストピア」、「反体制派のテロ」、「SF的な社会像」などの最高の要素が組み合わされていることに気づきます。
けど、実際にはもっと「小さい」んです。
描かれるのは舞台の「シカゴ」いち都市のみ。
侵略の様子や支配の状況も明確には語られず、ニュース報道や主人公たちの発言などからその様子をかろうじて窺い知ることができる程度。
レジスタンスの行動は詳細に描かれるけど、エイリアン側の施策は説明無しのほったらかし状態。
素晴らしい世界観に対して、描かれる部分があまりにも少なくて地域限定的で、非常に勿体ないと思いました。
さらに言えば、上述した世界観の部分も、私が脳内で勝手に補完した部分も少なからずあります。
映画の中では、匂わせ発言はあっても、明確には描かれないんです。
だから、SF知識があったり、想像力や空想力があれば何とか補完して広い視野で世界観を構築できるけど、そうでないと「B級」と感じてしまうと思います。
(決して私の自画自賛ではなく、あくまでも一般的な話。恐らく、私だって小さい部分しか観れていないと思いますし)
せっかく良い設定だから、もっと広く語って欲しかったです。
「エイリアンはこんなに酷い!」とか「人類は虐げられている!」とか。「世界各地で不満が爆発している!」とか「他の都市ではこんな状況」とか。
もしかしたら逆に「エイリアンは素晴らしい!」とか「既存の価値観を壊した!」とかのポジティブな内容かもしれませんけど。
どちらにせよ、もっとマクロな視点で世界観を描いて説明して欲しかったというのが正直なところです。
これ、エイリアンの必要ある?
「エイリアンである必要ある?」
──────いえ、ないです。
はい、これが核心。
この映画は敵?がエイリアンである必要が一切ないんですよ。ここが「期待とのズレ」の一番大きな原因なのかな、と。
観客(私)はエイリアン映画を観たいけど、実際の内容は泥臭いレジスタンス映画だったわけですからね。
世界観の感想部分で「これは現代の戦争と同じだ!」と言いました。
つまり、エイリアンである必要は無いんですよね。
例えば第三次世界大戦が勃発した世界とか、米中開戦して中国が米国を侵略した世界とか。ナチスやソ連が復活した世界でもいい。
要するに、「戦争・侵略・支配」の展開に合致する内容なら敵は誰でもいいわけです。
その理由は、主役がレジスタンスだから。
エイリアンに対して最新兵器やロボで戦う英雄ではなく、地下に潜って抵抗運動を続ける人々が主人公だから。彼らの目的は表面的には「打倒エイリアン」だけど、実際には「支配からの解放」なわけで。これはエイリアン限定のものではないですからね。
極めつけはコレ。
「エイリアンが登場しない!」
少し大袈裟です。
実際には姿も声も描かれるし、人間を殺したり、指示を出したりします。けど、ほとんど姿を現さないか、物陰の暗闇に覆われているんですよ。
姿が見えないエイリアンは何度も描かれてきました。
『宇宙戦争』や『インターステラー』。何度も名前を出しますが『ロサンゼルス決戦』や『インデペンデンス・デイ』なども。でも、これらの作品ってそこに意味があったり、恐怖やスリルなどの演出がありました。
団結集会に[統治者]現る(本編シーン)
本作『囚われた国家』では、エイリアンの姿が見えないことの意味があまり汲み取れませんでした。
強いて言えば、「仮想敵としての存在」ということ。
レジスタンスの敵をつくる上で、エイリアンを用いたのかな、と。
でもそれって、エイリアンである必要はないじゃん?
「敵」は誰か。
「エイリアンである必要はないじゃん?」
となると、一体敵は誰なのか。
レジスタンスが戦う以上、敵の存在は必要不可欠なわけですが、その部分も曖昧だったので、惜しいな、と。
敵は侵略者・エイリアンなのか。
それとも人間なのか。
エイリアンの指示に従って人類の統治権を明け渡した各国政府や指導部なのか。
エイリアンに協力して人々を監視する警察や軍隊なのか。
この苦境を逆手に取って儲ける富豪なのか。
反抗の声をあげない市民なのか。
多分、どのパターンでも映画は作れます。
ただ、具体的にターゲットを明確にした方が「面白さ」という部分では助かるんですけどね。本作ではその明示が微妙でした。
逆にいえば、固定的な見方ができない複雑な社会構造を、描いたという意味で本作を評価することができるのかもしれませんけどね。
マーケティング詐欺では!?
私がこの作品を観に行った理由。
もちろん「SFが好き」とか「エイリアンが好き」とかいうのもありますが、一番の理由はポスターに描かれた「宇宙船」と「ロボ」の存在です。
訳わからない敵を前に、星条旗と共に立つ黒人。
このポスターだけでご飯何杯もいけますよ!
でも実際は違った。
宇宙船もロボットもほとんど登場せず。
レジスタンスの抵抗活動が地上で繰り広げられるだけ。
これは「マジかよ......」と思いました。
以降、映画本編のネタバレあり
映画の感想 (※ネタバレあり)
エイリアンの侵略
本作、エイリアンへの疑問が大きすぎ。
頭の中で「?」がいっぱい浮かびました。
鑑賞前は完全に「SFエイリアン映画」だと思っていたので、ちょっと拍子抜けというか、面食らったというか。
まず、外観からいきますか。
「ウニ星人」といわれるようなフォルム。
全身が毛のようなもので覆われ、それを硬質化させることで鋭いトゲになる特性を持ったエイリアン。
最初、主人公の両親が殺されたシーン。
両親は瞬殺されて血飛沫に。あそこは確かに怖かったです。全身が針山地獄みたいなエイリアンが探りにくる場面は緊張感ドキドキでした。
でも、最初はそのトゲトゲ野郎が「攻撃部隊」的な存在だと思ったんです。人類を支配しているエイリアンはもっと上層部にいるだろうと。
と思っていたら、「全員集会」みたいなので現れた「統治者」も同じトゲトゲだし、その後の逮捕&追跡の際も同じトゲトゲ野郎。
「マジかよ」と思いました。
そもそも、言語というか鳴き声じゃん。宇宙船を作るような文明があるなら言葉とかもっと発展しているのでは? 地球の言葉を喋ったりもしなかったし。
あんなクソ野郎に地球が侵略されたことを思うと、米国は一体何をしていたのかと、悲しくなってきます......。
個人的には「エイリアンが強い!」ということをもっと見せつけて欲しかったです。
そうじゃないと、地球が支配された理由が定かではないし、レジスタンスが苦戦する理由も曖昧になってしまうので。
レジスタンスの戦い
戦い方はスタンダードですね。
監視の目があるから、できるだけ分散させて、アナログな手法で計画実行を行うという点は評価できます。
けど、その方法にしてもやっぱり「う~ん......」と。
まず、「監視体制ガバガバじゃね?」という所。
首に埋め込んだ発信機で会話や行動履歴を監視しているのに、レジスタンスの行動をキャッチ出来なかったり。常に追跡を行っていれば、「慌てて車に乗り込む」なんて行動も不要でしょうに。
反対にレジスタンスだって、監視されているのを知っているのに、計画を口で話すなんで「馬鹿なんじゃないの?」と叫びたくなります。手紙とか筆談にするとか、他に方法はいくらでもあるだろうに。
最後のシーン。
シカゴ警察の肥満な司令官がテロ報告会で受けた質問の「ナンバー1との関係」については、分からない部分でした。
発信機で監視されているなら、行動履歴をたどればスグにバレそうなのに。
あの発信機は、警察などの体制側には埋め込まれないですかね?
もしそうだとすると、エイリアンは馬鹿ですよ。どの時代でも「クーデター」は起こり得るんですから。
テロ攻撃とラストシーン
スタジアムでのテロ攻撃。
この機会に関しては、「統治者と接触する機会」という意味で文句ないと思います。
でも、なんで歓迎団は地下道で統治者と会ったのでしょう?
あそこで迎え入れて、スタジアム内まで案内するつもりだった? それとも、統治者が一般民衆には姿を見られるのを嫌うから?
一大イベントとしては、なんだかメインの部分が盛り上がりに欠けるな~と思ってしまいました。
ラスト。
シカゴ警察の肥満な司令官が、実はレジスタンスだったという熱い展開。
娼館で会っていた女性がナンバー1だと判明したことで、「君を守りきれない」という台詞など伏線が回収されました!
そして、地下の閉鎖地区に降下する際に、透明爆弾を背中いっぱいに背負って向かう彼が、表情ひとつ変えないところがまた良かったです!
エンドロールの映像を見る限り、他の世界の主要都市でも反抗活動が発生したようですね。良かった、良かった!
『囚われた国家』の感想でした。
本作単体では「弱いな」と思ったり、「世界観が曖昧だな」と思う部分もありましたが、これは「続編」とか「スピンオフ」とか「TVドラマ化」とかしながら世界観を掘り下げていくと、もっと面白くなると思いました!!
#SaveTheCinema
「ミニシアターを救え!」プロジェクト
新型コロナウイルスの感染拡大や自粛に伴って、大きな打撃を受けている小規模映画館(ミニシアター)に対する支援を求めるネット署名です。
#SaveTheCinema
— ArA-1 (@1_ARA_1) April 7, 2020
「ミニシアターを救え!」プロジェクト
賛同させていただきました。
微力ながらご支援も少しだけ。
「新型コロナウィルスによって大きな打撃を受けている 小規模映画館(ミニシアター)等への緊急支援を求めます」 https://t.co/lWN8FRSmbT @change_jp
概要文がとても良かったです。コレを読んで、共感したから、賛同させていただきました。
映画は人に観てもらって、初めて完成すると言います。そういう意味で、映画館は、映画と観客を結ぶ架け橋、映画という表現の最前線なのです。それをどうしても守りたい。
#SaveTheCinema
微力ながら、ご支援も。
大きな金額は払えないけど、しばらく映画館に行けない期間が続くし、「映画代を払う」と思えば良いことなのかな、と。
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!