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映画・アニメ・美術展などを中心に感想を書いています!

『映画』や『アニメ』、『読書』や『美術館』などの思い出を残すために始めたブログです。完全に個人用なので読みにくかったらスイマセン!

【アニメ映画】『HELLO WORLD』:デジタル<日常>とアナログ<SF>が融合するセカイ系の新世界

 

 

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※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。

2019年9月20日鑑賞

HELLO WORLD

「僕らは、現実世界の記録«データ»」少女を救うセカイ系の新世界!こんな壮大なSFは見たことない!京都を舞台に、数多オマージュの先にある❝ラスト1秒❞までが予測超越!現実を作品補完に取込む《xR》アナログな青春と恋は愛おしく萌え、デジタルな求心アクションに興奮!


【評価:5.0/5.0】

 
【一言】

豪華制作陣による最高傑作!
こんな壮大なアニメは見たことない!
本格SFとラノベを融合させたような興奮!

日常の楽しさとセカイ系の衝撃。
デジタルな世界とアナログの質感。
始まりから終わりまで、特別な疾走感と満足感!
衝撃と驚愕のエンターテインメント!

 
【Twitter140文字感想】

 

 


 

 

【目次】

 

 

STORY&STAFF

 

京都に暮らす内気な男子高校生・直実(北村匠海)の前に、10年後の未来から来た自分を名乗る青年・ナオミ(松坂桃李)が突然現れる。
ナオミによれば、同級生の瑠璃(浜辺美波)は直実と結ばれるが、その後事故によって命を落としてしまうと言う。
「頼む、力を貸してくれ。」彼女を救う為、大人になった自分自身を「先生」と呼ぶ、奇妙なバディが誕生する。
しかしその中で直実は、瑠璃に迫る運命、ナオミの真の目的、そしてこの現実世界に隠された大いなる秘密を知ることになる。
映画公式サイト

予告動画

 

監督:伊藤智彦
脚本:野崎まど
制作:グラフィニカ
音楽:2027Sound
キャスト:北村匠海, 松坂桃李, 浜辺美波 and more.
上映時間:98分
日本公開:2019年9月20日
配給: 東映
公式サイト

 

 

 


 

 

 

感想外観

 

 超楽しみにしていた『HELLO WORLD』
 制作陣も音楽陣も驚くほど豪華なメンバーで、期待は「どこまで面白いものを見せてくれるか」と高まるばかりでした!

 そして実際に観て……最高でした!
 文句なしに面白かったです!
 ────感想って一体何から書けば良いのやら(笑)

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 「この世界はデータである」
 予告動画の時点でこう宣言されていた本作。

 だからこそ、一体どんな《物語》が《展開》されるのかと楽しみでした。
 作品は期待も予想も遥かに上回る最高の青春SFテクノロジー&アクションを矢継ぎ早に展開していき、興奮が抑えられぬままのエンディングへ。

 「これは面白い」とそう確実に答えられる作品です!

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 SF作品の傑作にして進化系にして新境地!
 「これこそセカイ系だ」と提示する!

 《SF》は《現実》があってこそ。
 京都の街丸々再現したデジタルな世界を見事な映像表現で描き出し、一方でアナログなテイストを残して違和感を完全に排除する、素晴らしい内容。

 まるで、まったく新しい『インセプション』を観ているかのよう!



 「SF」と「日常」のコントラストが見事!

 ”ラノベ”に似た可愛い女の子との学校生活を端折ることなく描くことで観客の心に親しみや喜びを与え、一方で本格的な”SF”をガッツリと埋め込んだ本作。

 「萌え」に近いアニメ的な面白さと、「知的興奮」のようなSF独特の感動が同時に襲い来る、かつて体験したことのない傑作に仕上がっています!

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 作品を創り上げる制作陣&音楽陣がヤバい
 名を連ねる豪華さにふさわしい、最高の作品です!

 野崎まどの異質な日常を描く脚本と、それを映像化してしまう伊藤智彦監督の手腕。作品を盛り上げるのは豪華なミュージシャンらによる3曲の主題歌と劇伴曲。

 どこをとっても恐ろしい凄さで最高でした!

2027Soundトレーラー




 映像が本当に凄かった!

 「デジタル世界をどう表現するか?」
 数多のSF作品で挑戦してきたところであろうけど、本作は日本のアニメらしい、アニメならではの演出が随所に光っていて、幾度となく感嘆の声を上げそうになりました!



 プロデューサー・武井克弘さんのツイートが大好き!

 

 

 

 

 

映画の感想

 

現実も予告も映画の一部

  

 とにかく本当に面白かったです!
 なかなか言葉にするのが難しい。文章に表現するのも難しいけど、それ以上に作品の情報量と構成の凄さに、ただ「ヤバい」と笑うしか出来ないというか(笑)

 アニメ作品として面白いのは当然、SF作品としても誰もが観たことない境地を切り開き、”萌え”も”戦慄”も盛り込んだ作品です!

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 本作は上映前から作品が始まっています
 というか、全てを「伏線」や「補完」にしてしまっていた部分が本当に凄いと思いました! だからこそ映像で描かれる物語以上に濃く深い物語になっています。



まず、予告編。
 「僕らは、現実世界の記録<データ>だった」

 こう衝撃的な設定を明かす予告
 普通、そんな手の内を明かすようなことはしないですよ。
 有名なSF作品『マトリックス』や『インセプション』や『攻殻機動隊』でも「実は仮想でした」というネタバラシは物語の頂点に持ってくるし、いわゆる「夢オチ」もトリに据えるもの。

それを予告編でやってしまうから凄いんです!
 観客はその衝撃の事実を知った状態で映画を観ることになります。もちろん本編中で会話での解説はありますが、上映前からこの情報が頭にあると、”見え方”が全然違います。(シミュレーション仮説とかとはまた少し違うんですよね)

映画『マトリックス』製作20周年特別予告




 そして、現実
 私達が生活する2019年現在の《現実》を物語の補完とすることで、90分の映画以上の濃密さを演出しています。

 例えば。近年はスマホや人工知能等のブームによって一般の人々も「情報やデータ」の概念を知っている人が多いです。無意識であったとしてもその概念や認識が頭の中にあることで、作中で語られるプロジェクトやSF設定がスッと頭に入り、自然と自己補完して納得できるような感じ。

 劇中では、伏見稲荷大社や鴨川デルタなど京都の街並みがCGで完全に再現され、その中で巻き起こる物語がまた面白いんです!

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「SF作品」の新世界を提示

 

 本作はSF作品として最高でした!  SFといってもジャンルは膨大ですが、「宇宙系以外」はあらかたカバーしているのではないでしょうか。タイムリープも冒険もバトルもサイバーパンクも......。

 苦手な人には難しいですかね?
 物語を観て楽しむ分にはまったく大丈夫です!
 まぁ、プラスアルファの楽しさや奥深さという意味の「SFの凄さ」といったところでしょうか。



まずは、【セカイ系】の概念
 簡単に説明すれば「目の前に”世界の危機”と”好きな人の命”が同時に脅かされている時、世界を捨ててでも愛する人守る」というのがセカイ系。代表的なのは『エヴァ』とか『天気の子』とかでしょう。

 本作もセカイ系の系譜を汲んでいます。
 見事なまでに王道の内容のようでありながら、どこか「ん?」と違和感を抱くような部分も。これはあれだからですね─────ねぇ。(ネタバレ)

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 そして、「デジタル」をとことん多用し重用する作品。
 高校生の日常というアナログな世界、「京都」というアナログな建築物や空気感が漂う中でデジタルな様相を作品に混ぜ込む感覚がSFっぽくて面白い!

 「xR」の世界です。
 「AR (拡張現実)」は現実世界に仮想を重ねるもの、「VR (仮想現実)」は仮想世界を体験するもの、「MR (複合現実)」は仮想と現実を融合させるもの。そして「xR」とはこれらを超える拡張的な技術のこと。

 まず現実があり、そこに仮想・デジタル・ファンタジーが重なり生み出された本作の世界は「データ」という衝撃的で好奇心そそるもの。
 溢れ出んばかりの”SF感”とでも呼べばいいか、そんなワクワク感が嬉しい作品でした!

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さらに言えば、有名SF作品のオマージュ盛りだくさん
 夢の世界でアイデアを盗むレオ様主演の『インセプション』、データ世界でコンピュータと戦うキアヌ主演の『マトリックス』、未来の自分が過去の自分に接触する『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ルーパー』などなど。

 映画を観て思い浮かんだSF作品等は数しれず。
 映画パンフレットに追加情報が掲載されているので、ぜひ購入をオススメします!



 また、徹底的な設定考証も印象的でした。

 舞台は2027年の京都。
 現在の情報技術が進化した結果のデバイスやガジェットが自然に街中に溶け込んでいたり、対人コミュニケーションが変わっていたりと、細かい部分が本当に丁寧で面白かったです!

 

 

 

 

"SF"と"日常"のコントラスト

 

 「SF」と「日常」のコントラスト
 「デジタル」と「アナログ」の対比
「セルアニメ」と「CGアニメ」の差

 作品を観ていて印象的だったところです。



 まず、「SFと日常」
 SF一辺倒ではなく、日本アニメらしい”日常”を織り込んでいるところがこの作品の魅力だし、面白さをUPさせているポイントで、楽しさでもあります!

 どこかラノベ的な「萌え/可愛い」と「青春」
 ヒロインの女の子・一行瑠璃は黒髪で真面目で可愛い少女。彼女に対して恋心を抱く堅書直実が同じ図書委員の仕事の中で距離を縮めていく日常が描かれます。

 そこではSF要素は完全になし。
 難しいことを頭から締め出して、二人の恋路や青春のドキドキ感を楽しめる、まさに日本のアニメらしいパートで良かったです!

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 そして「デジタルとアナログ」
 この対比が一番わかりやすくて自然な状態なのに、印象や心に強烈な効果を生み出すから凄いです。

 舞台は2207年。
 スマホやデータの扱いが現在より少し進歩した近未来の中で、主人公の2人は「読書」が好きで、紙に鉛筆でメモしたり、その進化系である◯◯をしたりとアナログ派。  そんな2人が歩みだす恋の道もまた、かなりのアナログなもの。

 どこか冷たく無機質な印象のあるデジタルな中で、人間味がありホッと温かいアナログの存在は、観る人の心に働きかけるのだと思います!

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 最後の、「セルアニメとCG」

 これに関しては、後述する映像関係のところで触れますね。



 映画でも絵画でも「対比」って分かりやすいし、かなり強烈な効果や演出を観者に与えるテクニックだと思います。

 その中でも本作は、「デジタル≒SF」という中にある知的興奮や難しさを、「アナログ≒青春」というもので風味を付けるような、そんな面白さがありました!

 

 

 

 

作品を創る制作陣&音楽!

 

 本作は制作陣がとにかく豪華。
 その豪華さも、「本物」の凄さなんです!

 まさに「トップクリエイター」が結集した、最高の作品です!



 まずは、作品制作陣

監督:伊藤智彦
 『サマーウォーズ』で助監督を務め、『ソードアート・オンライン』シリーズの監督として同作を大ヒットに導いたアニメーター。

ソードアート・オンライン TVシリーズダイジェスト


脚本:野崎まど
 『[映] アムリタ』や『バビロン』で強烈な衝撃を残し、『正解するカド』の脚本でも記憶に新しい小説家。

『正解するカド』 予告第1弾


キャラデザ:堀口悠紀子
 『らき☆すた』や『けいおん!』のキャラデザで可愛い少女を描き出し、『涼宮ハルヒの憂鬱』等多くの京アニ作品に携わったアニメーター。

TVアニメ『たまこまーけっと』PV

br /> プロデューサー:武井克弘
 『君の名は。』を始め、『リトルウィッチアカデミア』や『ペンギン・ハイウェイ』などのアニメ作品を大ヒットに導いたプロデューサー。

TVアニメ『リトルウィッチアカデミア』本PV


アニメ制作:グラフィニカ
 『楽園追放』でセルルックCGを完成形へ導き、『SSSS.GRIDMAN』等の数々の有名作品で3DCGを手掛ける制作会社。

映画『楽園追放 -Expelled from Paradise-』予告編


音響監督:岩浪美和
 『ガルパン』、『幼女戦記』、『サイコパス』、『空の境界』...と数え上げればキリのないほど超人気作品を手掛けてきた音響監督。

TVアニメ『幼女戦記』特報PV


 これだけでも、物凄い布陣なわけです!
 「本物」の作品を作り上げてきた方々で、映画を観ていると随所にその感覚が見て取れるのが面白いです! SF世界の描き方、物語の展開とラスト、ヒロインの恋する表情、手描きと見間違えるアニメ、格好良く響く主題歌3曲───のように。



 そして、本作は音楽制作陣もすごいんです!

劇伴:2027Sound
 本作のために、OKAMOTO’S、Official髭男dism、Nulbarich、OBKR、Yaffle、STUTS、BRIAN SHINSEKAI、OPシンガーのAAAMYYYという次世代日本の音楽を引っ張るコンポーザーが参加した共同プロジェクト。


主題歌:OKAMOTO'S「新世界」


主題歌:Official髭男dism「イエスタデイ」


主題歌:Nulbarich「Lost Game」


 音楽に関しては説明できるほど詳しくないので......。でも音楽に疎い私でもアーティストの名前を聞いたことあり、アニメ主題歌やCMソングで楽曲を聞いたことがある、格好いい方々!  Nulbarichは、2019年に放送された大好きな音楽アニメ『キャロル&チューズデイ』でも劇伴作曲を手掛けています!

「キャロル&チューズデイ」参加コンポーザーPV




 その音楽が最高でした!
 シーン毎に表情を変える音楽は繊細でしかし心を踊らせる最高にノリのいいポップなもので、聞いていて楽しかったです!

 『君の名は。』や『天気の子』のように何曲も主題歌が用意され、そのヴォーカル入の楽曲がまた最高に格好いいんです!

オリジナル・サウンドトラック視聴動画




 関係者ついでに、声優・俳優も。

 主演は北村匠海、松坂桃李、浜辺美波の3人
 北村匠海と浜辺美波は微妙です。確かに上手かったし下手な俳優より数倍良かったですが、演技力が薄く棒読み感があるのと、滑舌が悪いのが致命的でした。
 その点、松坂桃李はやっぱり凄いですよ。演技は上手いし、声の雰囲気からキャラクターの感情が湧き上がってくる、まさに「声の演技」が出来てきました!

 あと、サブキャラで福原遥が出演。
 元々は俳優?だけれども、『プリキュア』で演じているだけあって、脇役なのに存在感あるし演技も上手くて驚きました!

 

 

 

 

データ世界を描く映像表現

 

 SF作品で楽しみなのは「映像」です。
 非現実の世界や設定をどう演出し映像に起こすのかは面白いし、今まで観たことない表現が次々に飛び出すから本当に楽しいんです!

 例えば『マトリックス』なら情報処理速度を「バレットタイム」で表現したり、『攻殻機動隊』が光学迷彩を透明に描いたり。
 そして、本作も素晴らしかったです!



 「データ」を表現する。
 フラクタルやピクセルが描かれるのは当然。

 本作では「情報の視覚化」が良かったです!
 ネタバレになるので具体例は避けますが、目に見えないデータを幾何学模様で描いたり、擬人化したり、ガラクタ寄せ集めの建造物的なものだったり、様々な工夫が凝らされていました!

Nulbarich - Lost Game




 あとは、有名映画を彷彿とさせるシーンも。

 一番分かりやすいのは、予告の街が曲がるシーン。
 これって『インセプション』のオマージュとかです!

映画『インセプション』予告編




 セルルックな3DCGも冴えていました!
 グラフィニカのCGはとても丁寧で、手描きアニメと見紛うほどの精度なのが本当に凄いです。それでいて、CGだからこその無機質感やデジタル感というのが随所から感じられて、とても良かったです!

 さらに「アニメ」だからこその表現も。
 いわゆる「アニメっぽい絵」やCGっぽい映像、単純なデジタル図形など、様々な映像素材を融合させて、かつ違和感なく演出として用いることができるのって、アニメの利点だと思うんです。
 洋画とかはリアルさが徹底的に求められますが、ゼロから世界を構築していくアニメだからリアルもファンタジーも雑に混ぜた作品が映像として成立するのだと思います!

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フィクションによる救済

 

 書こうか迷っていました。
 でも、「私の感想」と断った上で書きます。

 映画を観て感じました。
 そして、プロデューサー・武井克弘さんのツイートをみて、より思いが強くなったので、改めて文字として書き残しておくべく、ブログの「更新・追記」という形で記しました。(2019年9月22日)



 武井さんのツイートがこちら。




 「失ったモノ」を「フィクション」で救う。

 なんだか、胸が締め付けられるような、そんな感覚に陥りました。
 追悼であり、希望であり、感謝の形であるように映りました。

 もちろん、偶然でしょう。
 しかし、その偶然性すら超越するような、不思議な人的で神的な、不思議で運命的な繋がりを感じずにはいられませんでした。

 ここでは曖昧な言葉になってしまいますが、とにかく胸に深く残りました。



以降は、"少し"ネタバレが含まれます。
▶本編の内容には触れない程度の軽いものです。



 「フィクションによる救済」

 発生した事故を、過去に戻って「幸せ」な形で刻む。
 本作はそういう作品でした。

 武井さんが挙げられている『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』も同じような作品で、ある種の「救済」が描かれます。



 意図せずとも、京アニが浮かんで来ます。

 私がこの作品を観て真っ先に頭に浮かんだのは、2019年7月に発生した京都アニメーションでの放火事件です。
 この事件は本当に痛ましいもので、胸が苦しくなるほどの悲しみに襲われました。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りいたします。とともに、負傷された方の一日も早いご回復を願っております。

 観た方なら分かると思います。
 この『HELLO WORLD』という作品で描かれた内容が、京アニ放火事件への1つの追悼であり、希望であり、感謝の形であるように映りました。



 もちろん、偶然でしょう。
 映画のプロットの時点では事件は発生していませんでしたから。しかし、その偶然性さえも包含したような、そんな気がしました。

 京都が舞台の作品で、劇中に京アニ作品に登場する”聖地”が登場したり。キャラデザが京アニ作品を手掛ける堀口悠紀子さんだから、なおのこと深い印象が刻み込まれます。

 「フォクションによる救済」



 『けいおん!』に登場する鴨川デルタ、『響け!ユーフォニアム』に登場する京都駅の大階段。京都の街の風景が、京アニ作品を想起させます。

 そんな街を掛ける主人公が堀口さんのキャラデザだからなおさら。



 なかなか言葉にし難いですが、決して他人事の無関係な作品とは思えませんでした。

 無関係かもしれないし、武井さんが”あえて”触れなかったのだろうと思います。
 上の感想で書いた「現実」の力の大きさ、圧倒されるような強さに、打ちひしがれそうになりながらも、フィクションによる救済がある。

 頭の中にも心の中にも浮かんだので、浮かんだからには言葉で記しておきたくて、こうして書きました。更新しました。

 

 


 

 

 

以降、映画本編のネタバレあり

 

 

 


 

 

 

映画の感想
※ネタバレあり

 

「ラスト1秒でひっくり返る」

 

「この世界はデータ」
 上映前からそう宣言された本作。

 それを承知で観る観客。
 私はてっきり、最初に直実と瑠璃の恋愛が描かれて、終盤でデータ世界宣告があるのかと思いきや、かなりの序盤から明かされるんですね!

 観客も主人公も「データ世界」と知っての物語展開は、「世界の謎」ではなくて「どう救うのか」にフォーカスされていて面白かったです!



 序盤に「データ世界」と種明かし。

 そして考えるのは、その後の展開。
 私は「実はナオミの10年後の現実もデータ世界」というのが映画のオチだと推理していました。それが当たり障りのない自然な展開で落とし所かな、と。

そう思っていたら!
 まさか終盤中頃で「この世界も記録だったか」と
 おいおいおいおい、もうその展開を使ったよ! ミスリードというか、観客の予測を見事に予見して先回りされたよ! と驚きでしかありませんでした。



 いよいよ、終盤。
 「ラスト1秒」はいつなのか。

 直実と瑠璃が元世界に戻る。
 「誰も知らない、新しい世界」と発する。
 そしてタイトルバック。

 これがラストなのか。
 まさに創世記ばりの「HELLO WORLD」、プログラム言語の最初の言葉。映画の終わりに相応しい始まりなのかもしれないと、勝手に納得する私の脳内。



 まだ先があった。

 「やった!」と女性の声
 ───まさか。

 そのまさか。
 目を開けて確認した声の主はルリ。昏睡状態だったのはナオミの方で、ここまでが全て記録の世界の物語だったというオチ───



 でもない。
 その先が本当の「ラスト1秒」

 ナオミの病室からカメラが引いていき、建物を抜け、パッと目の前に広がったのは宇宙空間。青い地球を彼方に見やる、月面基地と思しき遠景

 これで終幕、エンドロールへ。
 まさか、そこまで広がるとは。マトリョーシカを外側に開くような、入れ子構造が外へ広がるような、誰も予想しなかった最後。「ラスト1秒」のキャッチコピーは本物でした!

 

 

 

 

"SF"と"現実"のオマージュ

 

 私も作品をたくさん観ているわけではありません。
 そんな私でも、この『HELLO WORLD』という作品に込められた様々なSF作品の片鱗を垣間見た気がしてとても嬉しかったです!

 もちろん、どこまでが制作陣の意図で、どこまでが偶然なのか、私の妄想とこじつけなのかは微妙なところですが。



 まず一番最初に浮かんだ作品は『インセプション』

 レオナルド・ディカプリオ主演の映画で、他人の夢の中に入って機密情報やアイデアを盗み取るという作品。『オーシャンズ11』的な痛快泥棒な側面と、『007』のように慎重な側面があり、「夢」を映像化した表現が印象的な作品。

 物語の構成がまさに一致!
 『インセプション』では「夢の中で夢を見る」という入れ子構造でどんどん深部に潜っていくストーリー展開。対して『HELLO WORLD』は「データの中のデータ」という似たような構造になっており、判明した時には鳥肌が立ちました!!
 また、イメージが大きな武器になるところも似ていますよね!



 《アルタラ》の「クロニクル京都」
 物語の根幹を成す記録データで、京都の街も人もあらゆる情報を際限なく収集し記録するプロジェクト。街の地理情報に人々の個人情報、生体情報など全て。

 これは完全に「Google」です!
 「知識の集約」や「情報の収集」を掲げるグーグルの活動をさらに極めて街まるごとアーカイブしてしまったのが「クロニクル京都」なのだと思います。

 特に、今や誰もがグーグルのサービスを利用している現代だからこそ、前提知識的な役割を果たしたのでしょう!



 現在の自分と未来の自分の物語。

 パンフレットでは、プロデューサーの武井克弘が影響を受けた作品として『ルーパー』と『Fate/stay night [UBW]』が挙げられていました。
 確かに、自分自身と対話する、「未来の自分」が物語を動かすという点ではなるほどな、と。『ルーパー』は思い浮かびましたが『Fate』は盲点でした。

 あと私が浮かべたのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
 過去の「恋」を成功に導くようにするという行動は、まさに『BTTF』のマーティと似ていると感じました!



 他にも、データ世界の移動が『SAO』の「リンクスタート!」に似ていたり、バトルシーンが『サマーウォーズ』に似ていたりと、楽しかったです!

 また、学校のトイレにナオミが現れる場面。
 既視感があったのですが、パンフレットで伊藤監督が『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のオマージュであると明かしていて、既視感の正体が判明しました!



 本作はパンフレットが凄いです!
 まるで、SF作品のバイブル的な貴重な1冊。

 それだけ制作陣が様々なSF作品をイメージし、オマージュし、リスペクトしてるのです。読んでいて楽しかったし、今後も大切なパンフになりそうです!

 新世紀エヴァンゲリオン、ポケモンGO、マトリックス、インセプション、ドクター・ストレンジ、ベスト・キッド、オーロラの彼方へ、僕だけがいない街、バニラ・スカイ、電脳コイル、インターステラー、500日のサマー、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー、BLAM!、不思議の国のアリス、ルーパー......etc.

 たくさんの作品が、インタビューの中に登場して、本当に嬉しかったです!

 

 

 

 

登場人物とアナログ

 

 上の感想で「アナログ」を押しました。
 この点は主人公2人の行動も含めてとても印象的でした。

 機械音痴でスマホが苦手な一行瑠璃。(可愛い)
 「アドレス交換」を問う直実に対して、メモ帳に鉛筆で住所を書いて渡すというアナログな彼女。でもそれがなんだか安心する感覚を覚えました。

 とか思っていたら、「手紙」で「文通」
 舞台は2027年。スマホ時代にあえて手紙を送るという、もう胸がトキメク展開。デジタルに取り残された彼女だけど、誰よりも感覚的に充実した日々なのかもしれなと思いました。
 また、「この世界はデータ」と知っている中での文通というコントラストが少し滑稽で、フフッと笑みが溢れました!



 「本」が大きな役割を果たすのも!

 紙の書籍って「アナログ」とか「オールドメディア」を象徴するような存在。
 そんなアイテムが直実と瑠璃を繋げ、古本市というイベントを起こし、「好きなジャンルを語る」という憧れの会話まで演出しました。

 「僕はSFが好き」
 「SFは普通の世界の延長だから」
 そう話す直実の言葉には大いに共感したし、『HELLO WORLD』という作品を観ている人の多くは共感するものかもしれません!



 ついでに、書いておきます。
 一行瑠璃がめっちゃ可愛い!

 ついでとは失礼ですね。
 でも、普段はそっけない彼女が、直実に対して心を開いて喋ったり、恋心を抱いて頬を赤らめたりする表情が本当に可愛くて大好きです!

 古本市での告白が至高。
 「好きなんだ」と伝える直実に対して、「交際は1人ではできない。2人でやってみましょうか」と返事をする彼女が天使過ぎます!!!

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物語展開と感想

 

 大雑把な物語の展開と感想です。
 そういえば、今回は書いていなかったですからね。



 京都は伏見稲荷大社でナオミと遭遇。
 花火大会での事故の話をされ、「瑠璃と付き合う作戦」を遂行すべくナオミの未来日記「最強マニュアル」を基に行動します。

 以前に観光で行ったことがありますが、「何かがでそう」という神秘的な雰囲気が漂っていて、ここを2人のコンタクト地に選んだのは正解だと思います!
 マニュアルでの行動は、先が分かっているとはいえ、まさに「青春」で羨ましいや可愛いやで楽しい物語でした!




 「グッドデザイン〈神の手〉」の訓練。

 世界の神として万物を創造できる手袋というのは、何かの作品で見た気がするのですが....なんでしたっけ? 小説『王国の鍵』シリーズとかでしたっけ...?



 事故がある花火大会の日。
 瑠璃を守るも、ナオミが「器に入れる精神が必要」と彼女を連れ去ります。
 ここで明らかになるのは、瑠璃は脳死状態で、彼女の中身となる記憶と精神を得るために「クロニクル京都」の内部にアクセスしていた、ということ。

 この時点で衝撃が襲います。
 まさか、先生と仰いでいた人物が自分の目的の為に利用していたとは。これってまさに「セカイ系」だけど共感は得られない、不思議な感じのもの。



 そして、修復システムが暴走。
 直実は現実世界へ移動をし、しかしその現実世界すらデータであると判明。精巧に再現された京都を舞台にした逃避行とバトルが展開されます。

 ここは本当に面白かった!
 まさに手に汗握るカーチェイスに、物質錬成の能力を活かしたバトルは目をみはる面白さがありました! 中でも街の構造を変えてしまう逃げ方が凄かったです!



 京都駅の大階段で元の世界へ。
 狐仮面の修復システムとの決戦。

 瑠璃がナオミに対して「貴方は私を愛してくれたのですね」という言葉をかける。この一言がとても優しくて愛おしくて、報われるような感覚にもなる、最高に胸に響くものでした。



 そして、元の世界へ。

 美しいキス、新世界、ラスト1秒とエンドロール。
 とても気持ちの良い終わり方だったと思います!

 

 

 


 

 

 

 ということで、本作の感想は以上です!

 面白い質問を頂きました!
 ありがとうございます!




 この作品、始まりから終わりまで、最高でした!

 まず、上映前。
 普通なら予告やCMが流れますが、スクリーンに投影されていたのは上映開始までのカウントダウン。そして、主題歌4曲がBGMで流れていました。

 まるで舞台挨拶のような、特別な感覚で映画を観ることが出来たのが最高でした!

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 それから、パンフレットは「購入必須」です!
 作品の解説は当然、様々なSF作品やアメコミ作品まで、まるで「SF作品のバイブル」的な情報量で、読んでいてとっても楽しかったです!

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 最後まで読んでくださり、
 本当にありがとうございました!!