【映画】『クリード2/炎の宿敵』:不屈の強さに胸熱く、死闘に泥塗る冒涜に興ざめ。
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※ネタバレなし。
※画像は予告映像のキャプチャです。
2019年1月21日鑑賞
【評価:2.6/5.0】
【一言】
何度倒れても立ち上がる、不屈の強さ。
食らう痛みに顔ゆがむけど、決して諦めない意志が格好良い!
ただ、長く複雑な物語は微妙。
“あの試合”を冒涜している!
【Twitter140文字感想】
【 #クリード /炎の宿敵】
— ArA-1 (@1_ARA_1) 2019年1月22日
1958年の“あの試合”。
《クリードvsドラゴ》の死闘、再び。
熱狂の歓声とBGM、闘志漲る拳。
ファイトシーンの溢れる気迫に興奮!
『Rocky Ⅳ』の熱戦へ泥塗り冒涜。
“運命”とは程遠い再挑戦の動機。
オマージュすらチープに感じる若者。
積み重ねたモノの重さが違う。 pic.twitter.com/yQ8yE1I3Bb
感想
感想外観
『ロッキー』好きだし、『クリード』でも男泣きしたので、超期待していました!
実際に観てみて……う〜ん……物語面でちょっと期待はずれだったかなぁと。
でも、『ロッキー』のテーマが流れるシーンはテンションMAXに!
特別映像【"ロッキー"から"クリード"へ編】(あらすじ)
まず何よりも【クリード vs ドラゴ】。
アポロ、ロッキー、イワンという宿命の3人。
運命を背負う息子のアドニスとヴィクター。
父親の栄光/憎悪と、自身の人生を懸けた闘いが最高だし、その描き方が見事でした!
そして、ボクシング・ファイト!
前作『クリードⅠ』でもそうでしたが、圧倒的に“見世物”として洗練されていて、映像を観ているだけで伝わる気迫とかが凄いです!
打ち込まれるパンチの重さが、自分も殴られたかのように伝わってくる“痛み”が凄かったです。
物語の部分は嫌い。
「闘志溢れる野獣のファイト」
私が好きなのはこれで、周囲に左右されず、真っ直ぐに自分の道を突き進むボクサーが大好き。
だから、恋人とのイチャイチャや妊娠と出産などの要素がクリード自身を邪魔してるように感じてしまいました。
それに、過去の3人の死闘を経た物語がこれだとすれば、それは冒涜とすら受けとれると思います。
“伝説”《アドニス・クリード》が成長する物語。
でも、良い意味でも悪い意味でもまだまだ「ロッキーの物語」だと感じました。
ロッキーの威厳と存在は大きいし、言葉の重みも誰より強い。 だから、映画のオマージュやリスペクト部分がチープに感じました。
対比が秀逸な、宿命背負う闘い
歴史に刻まれた闘い。
アポロ・クリード vs イワン・ドラゴ。
倒れたアポロ、ソ連へ飛ぶロッキー。
そして、イワン・ドラゴとの対決。
観客総立ちのヒーローインタビュー。
アポロという名選手が倒れた中で、世界を巻き込んだボクシングの試合。その結末を固唾を呑んで見守りました。
その闘いは息子たちへ。
《アドニス・クリード》
父の栄光を崩した相手との闘いであり、チャンピョンという期待が重く伸し掛かる闘い。
You're A Creed - Ludwig Goransson
《ヴィクター・ドラゴ》
戦いに負けて祖国を追われた父親の無念と憎悪を背負い戦う。 父親、そして息子自身のエネルギーに満ち満ちた闘志に燃える瞳が強かったし、怖くもありました。
特別映像【ヴィクター・ドラゴ編】
その描き方が『炎の友情』と同じく「対比」が秀逸で印象的でした!
クリードとドラゴ、両者の立場を見事に対比させて描く内容────練習・会見・試合・世論・戦術・スタンス……etc. が本当に分かりやすくて、印象に残ります。
積み上げてきたものの大きさとかも全然違って、そのコントラストが非常に上手く描かれていたと思いました!
「アポロの息子」という主人公なのだから、決して避けられない戦いだったでしょう!
ボクシング・ファイト!
「映画」という映像作品として、ボクシングの試合(+練習)のシーンは見応えあるものになっていました!
選手らから漲るエネルギーに加えて、観客による歓声、ライトの演出、息遣いとか筋肉の動きとか、そういう要素全てが「最も輝く映し方」で描かれてる!
『クリード チャンプを継ぐ男』本編ファイトシーン映像
鍛え抜いた筋肉の筋が美しいし、力強いパンチに歪む顔がスローモーションで映されれば痛さに震えるし。
腹部に強烈なパンチを食らって喘ぐ姿をみれば、自分も殴られたようにすら感じるし、肋骨が折れて倒れ込む姿は目を覆いたくなるし。
本当に、観客にまで伝わるほどの質感というか距離感というかが凄かったです。
ずっと、手に汗握りながら、拳を強く握りしめて、試合の行方を見守っていました。
狭いリングの中での死闘は本当に凄かったです!
しかも、試合シーンがかなり長く、実況が入っていたりと本物の試合を見ているかのようでした!
実況や歓声を一言一句全て訳さないところとかから、会場の雰囲気が伝わってくるような気がします。
「俺の闘い」と言えど...
設定とファイトシーンは大好き!
でも、物語の内容は大嫌いでした。
私が見たかったのは、「決意を滲ませ、闘志溢れる野獣のファイト」です。怪我も死も覚悟して、目の前の敵に立ち向かう姿川本当に格好良いと思います。
しかし、本作はどうでしょう?
アドニスと恋人ビアンカのやり取りばかりが目立つし、ラブストーリーとでも言いたげに恋模様と愛模様が描かれるし。
「人生の転換」という意味では、交際も喧嘩も、その他色々も重要なエピソードになりますが、果たしてそれを『ロッキー』改め『クリード』に挿入すべきなのか………。
確か、前作でS.スタローンが「『ロッキー』には(あえて)恋とかセックスとかを描かなかった」的な事を言ってました。
本作シリーズでもS.スタローンが制作に大きく関わってはいるものの、その方向転換は如何なものかと感じました。
あと、長い!!
120分強という時間はまぁ良いとして、その内容がグダグダだから非常に長く感じる! ボクシング関連のシーンに対して、色恋模様やアドニスの葛藤とかが多すぎる!
確かに「試合をするに至る決心」までの道程とかは重要ですが、「これは俺の戦いだ!」と豪語する割には意思決定のプロセスがあまりにもゴチャゴチャで曖昧な気がしました。
ロッキー・バルボアの存在感
やっぱり、ロッキーの存在はデカい!
あの威厳と強さに満ち溢れたオーラもだし、格好良くいい感じに年をとった姿もだし、堂々たる巨体な部分もそうですし。
「クリード」が主人公でありなから、まだまだロッキーが主役の座を譲っていなくて、《ロッキーの物語》でありした!
良い意味での、「ロッキーの物語」
アドニス・クリードという若造が主役な訳ですが、ロッキーの存在は物語に重みと説得力を与えているように感じます。
それに、ロッキーの発する言葉は一言一句全てが胸に響く強さを持っていて、それを聞けるというのもまた嬉しいところ。
悪い意味での、「ロッキーの物語」
これは簡単ですね、アドニスの存在が薄まってしまうという点です。
セコンドであり、コーチ的な存在であり、父親の親友でもあったロッキーを師匠のように慕い、様々な助言を求めるアドニス。それは十二分に理解できますが、アドニス自身の物語が薄まってしまうようでした。
それに、『ロッキー』シリーズへのオマージュ等も散見されましたが、アドニス自身の存在感が薄い為か、チープに感じてしまったのは事実です。
『ロッキー』を冒涜された怒り!
これには結構イライラしました。
簡単に言っちゃえば「Ⅳの終幕でいいじゃん、蒸し返す必要ある?」です。“あの試合”をこうして再戦へ持ち出すのはなんだかなぁ~。観客は望んでいるだろうけど、その内容や動機があまりに御粗末。
なかなか言葉では説明難しいし、上の感想と矛盾するようなところもありますが……。
まず、【クリードvsドラゴ】という設定。
映画としてはとても面白いし、続編を制作するきっかけにも相応しいと思います。「アポロの息子」という主人公ならば決して避けられない物語でもあるかと。
でもしかし。
“あの”試合────米国でのアポロの死、ソ連での死闘、完全アウェイの観客を総立ちにさせたロッキーの演説────を上書きし塗り替え、リセットするかのように描かれる部分には腹が立ちました。
私の感想では「イワンも完敗を認めてた」し、“あの夜”の試合は最高の形で決着がついていてたと思います。
だからこそ、それをイワン自身が蒸し返す形での物語展開にしたのは、イワン自身の栄光にも、米国の2人のボクサーの威厳にも、泥を塗られた気分です。
特別映像【歴史的試合編】
ロッキーとアドニスでは重みが違う。
『ロッキー』には長年積み上げた強さ、大衆からの絶大な人気、そして当時の社会背景をバックにした物語の重みがありました。
しかし、『クリード』ではまだまだ若造に感じてしまいます。名前こそ親の七光りで売れたものの、人間性やボクサーとしてはロッキーに到底届かない気がします。
これを、物語を同じ舞台に揃え、同じリング上に上がらせるというのは、アンバランスでは?
興奮して、感動した、あの夜の試合。
それへのリスペクトも感じましたが、どこか冒涜されたようで嫌な後味でした。
しかし一方で、この作品を作り上げてきたS.スタローン自身が脚本を務める上に、様々なことを語っているのを見ると、どこか申し訳なくなるような。
特別映像【"炎の友情"から"炎の宿敵"へ編】
以降、映画本編のネタバレあり
映画の感想
※ネタバレあり
心に響く、ロッキーの言葉!
上の感想でも散々書きましたが、ロッキーの言葉は本当に胸に響くし、感動的で、その持つパワーが凄いです!
本作でも、冒頭からガッツリと心を掴まれました!
まず冒頭。
アドニスがチャンピオン・マッチに────アポロもロッキーも手にしたベルトに挑む控室。
「リングへの階段は3段。しかし、今夜は山のように高い。そして、ロープの向こうは孤独」
ロッキー自身の経験を込めて、緊張し興奮するアドニスに投げかける言葉が出だしから最高! いざ、アドニスがリングに上がる時にかける一言「階段の意味を思い出せ」の効果がとても大きい!
そして、物語が動く序盤。
ドラゴ親子が挑戦試合を挑む会見をし、イワンが「エイドリアン」を訪れた後。
「この試合を受けないと後悔する」と言うアドニスに対し、「俺は後悔した」というロッキーの一言が重く響きます。その言葉の裏に込められた闘いを知っているから、なおさら「後悔」という一言が印象的です。
そして、「戦う意味────相手にはある、お前は?」と問うロッキー。
怒りと勢いに支配されたアドニスに、考えさせるような一言が。
本編映像"Taking the Fight"
「冒涜」と感じたエピソード
まず一番はラストのシーン。
試合を終えたアドニスが、父アポロの墓を訪れて話しかけた言葉でした。
「敵討ちでも、憎しみでもない────俺の戦いだから」
『クリード』単体の映画なら全く問題ない台詞でしょうが、背景に『ロッキー4』があることは必至で、この発言がソ連でのロッキーの演説や、イワンの叫びに被せてきたのは誰もが分かるところ。
でも、やっぱりその“重さ”が全然違うし、言葉に詰まってる信念というか背景の深さというか根性の大きさというかも別物。イワンやロッキーは心から訴えていたように感じたけれど、アドニスは台本を読んでいるだけのように感じていまいました......。
それから、戦い自体の設定も。
私個人の見解ですけど、ソ連での戦いでイワンは「奴は人間じゃなく鉄のよう」と言っているように、ロッキーの強さを認めた上で、敗北を受け入れているように感じました。
それに、「俺は祖国の為でなく、俺の為に戦っている」という発言からも、ロッキーへの尊敬と同時に、純粋なスポーツへの崇拝のようなものがあると感じました。
しかし、『クリード』でのイワンは、祖国もロッキーも恨んでいます。
祖国ソ連を捨てたのは自分だし、ロッキーを挑発したのも彼自身だし。
あの試合のせいで彼の人生が凋落へ向かったことに対する怒りとかは理解出来ますが、それを晴らそうとすべく、息子に術全てを託して米国へ挑戦をしに来るという展開には疑問を抱かざるを得ませんでした。
しかも、本作『クリード2』の終盤で描かれた、ロシアでの試合。
アドニスに形勢逆転されて負けそうになるヴィクターを見かねたイワンは、降参の意のタオルを投げ入れます。
このシーンにも結構違和感を抱きました。
もちろん、イワン自身はアポロが死ぬ姿が頭によぎったでしょうし、厳しいとはいえども愛する息子なのだから、守ろうとするのは当然。
しかし、一方ではボクサーとして戦い続けたいヴィクターの気持ちとか痛いほど分かるだろうし、あんなにも憎悪に燃えていた彼が対応をあっという間に翻したように思えて、少し違和感を覚えました。
アドニスとビアンカ
あくまでも私個人の意見ですが、一番余計なエピソードだと感じました。
心の支えとして愛する人が側にいて、この先も一生を共に歩みたいという展開なら理解できるし、納得できます。
しかし実際に描かれるのは、ビアンカとの確執であったり、結婚後の生活のギクシャクとかで、「ボクシング関係ないじゃん!」と思うのは必至。さらには、赤ん坊が生まれた時も「喜び」より「残念(?)」に近い表情を浮かべていて、凄く印象悪かったです。
そもそも、ビアンカの「聴覚障害」という設定は必要ですか?
ただでさえ、1人のボクサーという重厚なテーマがあるのに、その上にさらに「障害にた向かう夫婦」というエピソードは蛇足な気がしました。
偏った古臭い考えで申し訳ないですはが.......。
ビアンカには「アドニスを支え、道標になる」という役割に徹して欲しかったと考える自分がいます。
だって、彼女の物語ではないじゃないですか!
興奮を誘う圧巻のファイト・シーン!
やっぱり、ボクシングのシーンは凄い!
綺羅びやかなライト、耳を劈くような歓声、熱狂的なコール、気分を盛り上げる実況、リングに上がった瞬間に変わるボクサーの空気、2人の間に漂う緊感...etc. シーンを作り上げる全てが最高です!
アドニス・クリード vs イヴァン・ドラゴ。
第1試合目。
イヴァンを煽りてたて、観客の歓声に応えるアドニス。
しかし、ゴングが鳴って試合が始まると、その優勢さは一転し、次々に攻撃を受けるアドニス。ボディへのパンチで肋骨が折れ、腹部への攻撃は腎臓を損傷させ、頭部へのダメージは眼窩骨折と重度の脳震盪が。
アポロの試合の再来を観ているようで、拳を握りっぱなしでした!
第2戦。
タイトルへの挑戦であり、防衛戦。
本当に、強くて熱くて最高でした!
まず、登場が格好良い! 父イワンと炎に包まれて入場するヴィクターからはメラメラ燃える闘志で満ちています。一方、アドニスは対照的に、ライトによる演出とビアンカの美しい歌唱によって入場。
そして、いざ試合開始。
パワーで勝るヴィクターの攻撃を受けて倒れるアドニス。しかし、何度倒れても立ち上がり、立ち向かう姿が本当に格好良い! 小柄な体格とスピードを活かしてヴィクターに攻撃を繰り出すシーンは本当に応援して観てました!
タオルが投げ込まれ、試合終了。
実況の「自ら伝説を作った」という言葉、そしてロッキーの「お前の時代だ」という台詞にジーンと感動しました!
S.スタローンの『ロッキー』続編として
やっぱり、『ロッキー』へのオマージュは嬉しいです!
まず一番は「音楽」。
誰もが知っていて、聴くだけで胸が高鳴るあのメインテーマから『クリード』へと流れる感動は何にも形容し難い! 本作ではラストの試合で。いざここぞと流れました!
それから、アドニスが「虎の穴」で猛特訓するシーンでも。もう、これを聴けただけで感無量!
Lord Knows / Fighting Stronger(メインテーマ)
それから、練習シーン。
『ロッキー4』では米国とソ連とで練習環境が雲泥の差でしたが、本作『クリード2』では逆転して描かれます。ドラゴ側は最新のマシンを使い、クリード側は砂と埃みまみれて特訓する。
でも、この特訓のシーンが『ロッキー』らしくて、本当に嬉しかったです!
『クリード チャンプを継ぐ男』特訓シーン
ラスト。
癌になり、弱くなったロッキー。自身の身を畳むかのように、連絡をとっていなかった息子に会いに行きます。
『ロッキー5』で登場したロッキーの息子、彼はS.スタローンの実子です。そして、S.スタローンは息子を亡くしています。
ロッキーとスタローン、2人が“けじめ”をつけるように、息子の元を訪れたシーンに感動しました。
期待していただけに、少し残念でした。
S.スタローンの作品に対する想いは十二分に伝わってきましたが、物語の面で私には合いませんでした。
そんなスタローンは、「ロッキーを演じるのはこれで最後」とインタビューに答えています。素晴らしい熱を与えてくれたし、アドニス・クリードを導いてくれたことに対する感謝の気持ちでいっぱいです!
最後まで読んでくださり、
本当にありがとうございました!!